釣りキチ三平マガジンの最新号が書店に並んでいた。10日に発売されていたようだ。
http://www.sampei33.jp/top/sampei-hp-top.htm
http://www.sampei33.jp/news/sampei-news.htm
シベリア原野での釣りの話が、「谷地坊主が高田屋嘉兵衛の子孫」という衝撃のご都合主義設定を間に挟み「夜のキャンプで、谷内坊主が三平に嘉兵衛一代記を語る」という設定でゴーインに路線変更・・・されて始まったのが「矢口高雄流・高田屋嘉兵衛伝」。
これについては、まず矢口氏は司馬遼太郎「菜の花の沖」を許可を得てベースにしたのか、それとも高田屋嘉兵衛のさまざまな資料を自分で再構成しました、と自信を持っていえるのか、それが分からないところが気になる。
見逃したかもしれないが、どこかにそのへんの注釈ってあった?
いくら一人の人物の伝記は類似点が出るといっても、どのエピソード取捨選択するか、どう表現するかはおのずと異なる。両作を比較することも今後やってみたいとは思う。
ただ、
そのことを気にしないでおくなら、矢口が描いた高田屋嘉兵衛の数奇な抑留生活と、その中で逆にロシア軍人と相互の友情・尊敬を育て
、正式な国の機関がなしえなかった両国の対立回避、和平を成功させたドラマチックな実話ストーリーは実に面白い、面白い。そして感動的だ。
司馬の作品の中でも、「菜の花の沖」は作品、主人公とも比較でいうならマイナーなほうである。
こうやって光が再び当たるのは歓迎していい。
それに小説は八巻かそこらだ。コンパクトに読めるという点では・・・うん、やはり釣りキチ三平が「嘉兵衛伝」になるのは強引すぎるとか、司馬小説との関係は?とかいう話をひっくるめても、ここでこういう作品が残り、今後読まれていくことには意義があると見なしていいと思います。そして司馬小説を読了した人も未読の人も、読んで損は無いと思います。
あと、
これは一種、「みなもと太郎のリベンジ」
でもあります。
日本漫画文化史において、犯罪的な編集者とか編集部の所業は数あれど、旧「風雲児たち」で、「江戸後期」から「幕末直前」に行くまで約30年を省略させた”大爆走”はいまだに語り継がれる悲劇であった。
詳細はここ参照
http://sga851.cocolog-izu.com/sga/2006/07/post_991d.html
しかしその中で、みなもと太郎は必死にページを割き、総計10Pほどでこの嘉兵衛による日露和平をなんとか挿入した。
その中でも登場人物に「この一流の人物について詳しく記せないのが残念だ・・・」と未練たっぷりに言わせながらね(笑)。
もう何度繰り言をいってもせんないし、実際のところこのペースだとマジにみなもと氏の肉体的限界も気になってくるから、結果的には正しかったのかもしれんのだが(笑)、それを矢口氏が結果的にコラボしたと考えればいーのかもしれないのだ。
というわけで「風雲児たち」ファン
(最近http://d.hatena.ne.jp/kaien/20081018 のエントリが大評判だ)
も今回の釣りキチ三平を読むべし。逆に今回の「釣りキチ三平」を読んで面白かった人も風雲児たちを読むべし。
「風雲児たち」では嘉兵衛の前にロシアと日本を結んだ大黒屋光太夫の物語(あっ、例の故緒方拳氏は光太夫役を映画「おろしや国酔譚」で演じていたね)や、日露トラブルの発端であるレザノフの物語もえがかれており、これをしれば、また面白さも倍加する。