INVISIBLE Dojo. ーQUIET & COLORFUL PLACE-

John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

「地球温暖化論批判」本を毎日書評欄が紹介。山形浩生批判も。

これだけ独立させて紹介。先週だね。
うーん、重要部分を抜き出そうとするとかえってバランスが崩れる。
元サイトからすぐ消されてしまうし、ここは転載させてもらいたい。


http://mainichi.jp/enta/book/hondana/archive/news/2008/10/20081005ddm015070015000c.html

今週の本棚:海部宣男・評 『正しく知る…』『「地球温暖化」…』『地球と一緒に…』
 ◇『正しく知る地球温暖化−−誤った地球温暖化論に惑わされないために』=赤祖父俊一・著

 (誠文堂新光社・1470円)
 ◇『「地球温暖化」論に騙されるな!』=丸山茂徳・著

 (講談社・1470円)
 ◇『地球と一緒に頭も冷やせ!−−温暖化問題を問い直す』=ビョルン・ロンボルグ

 (ソフトバンククリエイティブ・2100円)
 ◇どこまでが人為的な気候変動なのか

 「地球温暖化」の文字が新聞に躍らない日はない。いっぽう、『温暖化のウソ』といった反論本が売れている。どっちがホント? 人間の活動による炭酸ガス増加で、地球は急速に温暖化しつつあるのだろうか? そこで今回は、人為的温暖化批判の本からいくつか選んでみた。

 まず、私の経験を挙げる。世界中を駆けめぐった一つの図があった。過去千年の地球の平均気温変化のグラフで、ゴアの『不都合な真実』にも登場する。地球の平均気温は千年前からゆっくり単調に低下を続け、一九〇〇年代に急カーブを描いて上昇を始める。その印象的な形から、「ホッケー・スティック」と呼ばれた。このカーブは炭酸ガス濃度の上昇と良く一致する。「炭酸ガス温室効果による急激な地球温暖化」を強く印象付け、二〇〇一年のIPCC気候変動に関する政府間パネル)報告の論拠の一つとなった。実をいえば、それまでやや懐疑的だった私も「ホッケー・スティック」には参って、講演などでこの図を使うようになった。

 ところが。二〇〇七年のIPCC報告には、この図がない。代わりに多くの論文のばらついたデータが重ねて示され、「千年前からの単調な気温低下と最近の急激な上昇」というホッケー・スティックの特徴は一気に薄まった。報告の結論は変わらないが、主にコンピュータによる気候変動予測に支えられている。地球温暖化研究はまだ進行中で、個々の結果に大きく影響されるなという教訓を、私は改めて学んだのである。

 とりあげる三冊の著者は、(1)『正しく知る……』アラスカでオーロラの研究を長年続ける極地研究の国際的リーダー、(2)『「地球温暖化」論……』いま大活躍中の地球史研究のリーダー、(3)『地球と一緒……』環境・温暖化論に統計データから反論するデンマーク統計学者だ。

 (1)は、特にお薦めである。著者は米国議会などで人為的地球温暖化論に懐疑的な意見を述べてきた。氷河の後退や北極氷の減少はいまに始まったことではなく、北半球の気候の計算機予測は当たっていないことなど、丁寧に述べる。特に例の「ホッケー・スティック」グラフを鋭く批判し、一四〇〇年から三百年ほど続いた「小氷河期」の気温低下が含まれておらず、大きな誤解を与えると強調する。これらを踏まえると地球温暖化は既に一九〇〇年頃(ごろ)から始まっており、IPCCがいうように「一九四〇年代に産業の拡大に伴って始まった」のではない。また現在気温は上昇しているが、それへの人類活動の寄与は少ないという。IPCCの性格や過去の気象変動の説明も要点が押さえられ、心配派も懐疑派も、眼を開かされることが多いだろう。

 (2)は、IPCCの結論があまりに性急なこと、日本のメディア・政治がそれに踊らされて巨大な浪費に向かっているという批判では、(1)と共通する。気候変動を繰り返してきた地球史を踏まえて変動の自然的要因を挙げ、現在の気温上昇は自然的変動で、気候は遠からず寒冷化に転じると主張する。著者の視点が躍動する面白い本だが、図やデータの出典がほとんどない。現在の変動を磁気・宇宙線の変動に結びつける根拠が弱く、グリーンランドが八〜十世紀に「緑に覆われていた」といったやや短絡的な記述など、本としての完成度が高くない点が惜しまれる。

 (3)は統計学からの批判で、豊富なグラフが特徴。ゴアはハリケーン被害の増大を挙げ、温暖化でハリケーンが巨大化すると警告する。だが統計からは、被害の増大は都市への集中など社会的変化の結果らしいことが見える。統計データというもの、便利だが気をつけねば。本書にも、?という所がある。データの見方を鍛える意味も含め、環境に関心ある読者には役立つだろう。著者は水、食料、医療、貧困など世界的課題と環境問題を比較し、費用対効果論を展開する。環境、特に温暖化対策はムダという結論だが、さて。

 (2)(3)のタイトル、(3)は訳文も、やや扇情的だ。同種の本も含め、政治やメディアが危機をあおっていると批判する側も、扇情的である。そうした本ほど、論旨の飛躍など乱暴なことが多い。科学的にしっかりした議論が必要なのに、それでは混乱を助長するだけではないのか。

 改めて思うのは、過去の気候変動、現状と予測などの研究・分析を進めることの大事さである。日本はIPCC報告の鵜呑(うの)みではなく、自前の科学的判断が出来る体制を作るべきだ。この問題の政治的・経済的なインパクトは巨大なのだから。

 (『地球と一緒に頭も冷やせ!』は山形浩生・訳

毎日新聞 2008年10月5日 東京朝刊

と、山形氏の訳に対して「扇情的である」と苦言も。