あとはあまりたくさんかけないので、ほっておくと古びてしまう話を。
数週間前から、ヤングマガジンの「センゴク」は、戦国時代を書くときにクライマックスのひとつとなる長篠合戦を描いている。
一巻からきちんと読み込んだわけじゃないが、センゴクはどこまでリアルなのか・・といえば、リアルな部分は正直多くないはず。「●●と思われているXXは、実は●●ではないんだよ」という、逆張りのひっくり返しに重点をおいて、やや無理がある造形をしていることも理由だろうな。
ただ、猛烈にうまいのは実在する資料から、自分のストーリーに都合のいい部分を抜き出し、切り張りして説得力を持たせる手法。
実際にその資料に当たる人はほとんどいないわけで、マンガの中に威勢のいい古文が抜き出されていると非常な説得力を持ち、ストーリー全体が引き締まる。
原哲夫「花の慶次」では、この「古典引用」手法はほんの数回しかやっていないと思うが、例えば前田慶次が太閤秀吉にお目見えし、最初は傾奇者の格好、二回目には古式ゆかしい正装で現れるところを
「ここで当時の『可観小説』から引用してみよう・・・」
とやっていて、あれはいまだに印象に残っている。
いま検索して引用ブログを発見、孫引く。
http://kousyoublog.jp/?eid=1489
「今度は成程くすみたる程に古代に作り、髪をも常に結直し、上下衣服等迄平生に改め、御前に出で御馬を拝領し、前後進退度に当り、見事なる体也。」
んで長篠合戦に戻る
ところがそういうふうに古い文献を自由自在に活用する「センゴク」だが(原作者は、資料を「嘘」のために使えるという点自体で相当詳しいことが分かる)、今回の長篠合戦は、そもそも伝説に彩られ、いまだに謎が多く、定説も無いような状況・・・・と言っていい。
以前は「観よ鉄砲三段撃ち!種子島のIT革命やぁーーー!」
で済んでいた幸せな時期もあったし、世界軍事史的にも偉業だとして
長篠合戦の世界史―ヨーロッパ軍事革命の衝撃1500~1800年
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http://d.hatena.ne.jp/shinichiroinaba/20071031/p1
でもちょっと紹介されている。
ただ、最近少なくとkも「三段撃ち」はさすがに非現実的な講談だとして否定されているし(第一、同じ三人一組、計三丁なら分業で射撃手、火薬・弾込め係、打った鉄砲の掃除係と特定させ、各自がそれだけ訓練、銃だけ交換したほうが分業の原則から能率的だ)、その敵役として登場し「旧時代から新時代へ」を象徴させる「武田騎馬軍団」も、そもそも日本の軍事史に、例外を除いて「騎兵」(騎馬隊)は存在しないのだ・・・・ということが言われている。
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これがまたややっこしい。いろいろと謎があるみたいなんよ。
http://miraikoro.3.pro.tok2.com/study/mekarauroko/jyuhou_to_rekishi02-01.htm
これがいわゆる”通説”への疑問の提示としてはいちばん良くまとまっていると思う。
しかし、この、今では少数派?の通説1を倒した後、その後実は後継者が現れずまさにセンゴク乱世、統一見解が無い。
一番の戦場である「ウィキペディアの合戦」においても
「という説がある」「との反論がある」のオンパレード。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%95%B7%E7%AF%A0%E3%81%AE%E6%88%A6%E3%81%84
「ノート」も熱い!!
まあ、こういうふうに定説が無いところこそかえってフィクションの腕の見せ所。
どういうふうに「センゴク」が解釈するか、興味深い。