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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています 

「銀河英雄伝説」創元版文庫6巻解説で、プロデューサーが「銀英伝をアニメ化することの苦労」を語る。

昨日、書店の目に付くところに

銀河英雄伝説〈6〉飛翔篇 (創元SF文庫)

銀河英雄伝説〈6〉飛翔篇 (創元SF文庫)

がありました。昨年末に出版されたのですね。
新版での文庫化の楽しみは、新しい人の解説です。さて誰がどんなことを書いているのか…と見ると、銀河英雄伝説を、あれは十何年前になるのか?アニメーション化した監督(※あとで検索で調べたら「解説はアニメ版『銀河英雄伝説』のプロデューサーである田原正利」との由 )が思い出や裏話を書いているのだが、門外漢にとってはへえそうなのか、という話ばっかりで大層面白かったので、記憶だよりですが紹介しよう

出会い

はじめは銀英伝を知らなかった。似た題名の「銀河XXXXX」を映像化できないかと思って書店に行ったら、隣にこの本があってタイトルが気になった。その日は最初の目当て本を買ったが、これは期待に反していた。そしたら銀英伝のことがあらためて気になり、買い求めたら巻をおくあたわざる面白さだった(最初の作品ってなんだったんでしょうね?)


脚本化の苦労「人が多すぎるし、動かないキャラがいます!」

脚本家は最初「人間が多すぎるのでひとつにまとめたい。例えばグリーンヒルとキャゼルヌの役割を一体化して一人にしたい」


「オーベルシュタインみたいな『謀略の天才』じゃ、実際に活躍する場面を作れません。彼は、直属の謀略実行部隊がいるという設定を付け加えたいのですが…」

「なんですか二人称の『卿』って!耳で聞いても分かりませんよ!却下!!」

これらは、普通のアニメ番組を作るのなら全部もっともなものばかりだった。しかし普通のアニメを作るつもりは無かったし、あの緻密な原作をちょっと変えると全体がゆがむ。これらに関しては押し切った。「卿」については…一晩中議論した。

いろいろ工夫

「黒色槍騎兵」「シュワルツ・ランツェンレイター」だが、実際にどう表現すればいいんだろう?声に出す時はどうするんだ?
と悩んだ結果、Schwarz Lanzenreiterというテロップを出して、それに「黒色槍騎兵」と訳の字幕をつけた。日本語のほうを、翻訳っぽくしたところがミソ。


黒といえば、軍服や宇宙を「黒」くしたのも画期的だった。黒い色と言うのは技術的な問題で当時は嫌われていた。(学生服なんかでも本当の黒はほとんどない)。そこをがんばって黒にした。


補足もしました

グリーンヒルはなぜ叛乱を起こしたか?を書くべし。そのまんまじゃ騙されただけの馬鹿に見える」

「ミュなんとかの人生を補足すべし(名前忘れたすいません。帝国側の人)」

「ラインハルトが、ヴェスターラント虐殺(貴族軍の自領地叛乱への核攻撃)を見殺しにした場面、そのままじゃちょっとイメージ悪すぎるからフォロー入れてほしい」
ということを要望し、それぞれに原作にはない何かが盛り込まれたらしい。
グリーンヒルは亡妻への墓参りで独白する場面などを盛り込んだという。


こういう改変に際しては、原作を「正典、正史」とするように位置づけたという。つまり原作が公式の歴史書だとして、そこは動かせないが、「そこには書いてない話」もあるはずで、そこを想像するのはいいだろう、ということだった。


そもそも制作方法が大胆な新手法だった

週一回、作品を通信販売(ビデオ?)するという前代未聞のやり方で100回以上の作品を制作した。その前にレーザーディスクのセット(何かは忘れた)が非常に売れたのでこの方式を思いついたという。
前、ここで「今は放送してのスポンサーとかより、DVDの売り上げを当てにしてアニメが作られています」というご教示を頂いたが、その先駆けかもしれない。

声優が多い

当たり前だが、登場人物を原作通りに出したので声優がたくさん集まった。
銀河声優伝説」と呼ばれた。

音楽での苦労と落とし穴

作品世界に合っているし、著作権料を節約する目論見もあって、クラシックを多用した。だが、ある戦争シーンで使用した「ボレロ」が当時は?著作権が存続していることが分かって慌てた。使用はやめようかとも思ったが、もうそのリズムとテンポで作画しちゃってたので、費用を何とかひねり出した。
(へー、ボレロは当時はまだか。例の「戦時加算」で延びていたそうです)



とまあ、その世界に詳しい人ならもう周知の事実も多いのだろうが、門外漢には意外な話も多かったので書かせてもらった。こういうふうに小説は漫画家されたり、ドラマ化されたりしていくのですね。
文庫解説だから、既に新書を持っている人なども目を通してみては。