INVISIBLE D. ーQUIET & COLORFUL PLACE-

John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

「ビラまき裁判」から発展(逸脱)して「電波少年」「一杯のかけそば」に至る謎を考える

「ビラまき裁判」と称していいんでしょうか、この前そういう裁判の判決が出ました。
各紙大きく扱い、社説に取り上げた新聞社もあったからけっこう広く知られているでしょう。
http://massacre.s59.xrea.com/othercgi/shasetsu/index.xcg?event=438
もっとも社説は賛否で激論、じゃなくて問題視しないほうは「そもそも小さな事件だ」として社説には書かないからバランスよくは読めないだろうが、大体の概要はつかめるはず。
はてなキーワードで、うまく統一的に閲覧できる方法が無いか探したが
12月11日から13日までの「東京高裁」で見るといいようだ。
http://d.hatena.ne.jp/keyworddiary/%c5%ec%b5%fe%b9%e2%ba%db?date=20071211
http://d.hatena.ne.jp/keyworddiary/%c5%ec%b5%fe%b9%e2%ba%db?date=20071212
http://d.hatena.ne.jp/keyworddiary/%c5%ec%b5%fe%b9%e2%ba%db?date=20071213



で、例の法哲学ブログ「おおやにき」(名古屋大大学院助教授・大屋雄裕ブログ)では高裁判決および一審判決(昨年)の時に感想エントリが書かれている。

一審判決に対し
http://www.axis-cafe.net/weblog/t-ohya/archives/000344.html
高裁判決に対し
http://www.axis-cafe.net/weblog/t-ohya/archives/000482.html

自分はこのへんの論点を詳しく考える力は無いんだけど「接点選択」(という造語を今作った)を広く認める、というのは今の流れとしてはそうなるんだろうな、という感じです。

これはちょっと流れとは関係ない、自分の中だけで考えた話だから穴だらけかもしれないんだけど、これがブログのいいところで、考えの赴くまま暴走します。

あらかじめ「申請・交渉」を拒否する手法

つまり「押し売り」でも「取材」でもいいんだけど、人間は社会の中で「他者」と関わるところというのが必ずありますよね。

「奥さん、ゴムひも買うてや」でも「お母さん、息子さんが大麻で逮捕されましたが感想をひとこと」でも、まず他者が要望を言いに来る。「うちは要りません」「取材はお断りです」でも、それを表明して、そこでやり取りがいろいろあって、駄目な場合は相手の断りの意志を確認、それを尊重して帰ると。そういうことになっている。

しかし、駄目かどうかを確認するための申し込みはできるので、押し売りも来るしワイドショーのレポーターも来る。
場合によっては殺到する。

ただ、それが本当にうざったいとなったらはじめから「押し売りお断り」「取材お断り」と張り紙なり、看板なりを目立つところにかけておく。
すると、その「そこを何とかと申請する・本当に駄目かどうかを確認する」もやれなくなる。
断る側からみれば、それをする手間を省ける。
−−−ようになったわけなんだろう。たぶん、前からそうだったんだろうけどそれが判決で確認されたと。


こういう、他者との接点の度合いを自分たちで決まられることを「接点選択」と造語したわけだ。
したからどうってものでもないが、ただこういう形の選択権が、強化される流れというのはあるようだ。


というのは和歌山カレーのときだったかな、神戸の酒鬼薔薇事件のときだったかな、ワイドショー構成に辟易した住民組織が自治会総会を開いて、「自治会の決定として、取材をお断りします」という張り紙を一斉に張り出したことがあったそうなんだ。
確か大谷昭宏氏だったかな、「取材を断るなら個別にその家が断ればいいんで、組織でこういうことをやるのは言論の自由の侵害」みたいなことを言って怒っていたんだよ。

「ワイドショーよけ」「突撃取材よけ」になる?

ただ、価値判断をひとまず置くとしたら「なるほど、いわゆるメディアスクラムを防ぐには『効果的』ではあるんだろうな」と、その住民会側の知恵に感心した記憶がある。

よくワイドショーなんかでもインターホンをピンポン鳴らし、取材申し込んで断られる、という場面があるけど、あれも「取材目的でのインターホン利用を禁ずる」もしくは「取材申請は住民会で一任を決めたので、委託した○○自治会広報を通じること。直接の取材を厳禁します」と明確に書いておけば、ワイドショーも新聞記者も手が出ないんじゃないですかね。法律的にはどうなのかな?


それでもやる人の理屈は。
相手は「取材(申請)は広報を通じて行うこと」と明示した。
「しかし、本人じゃないとどうしても駄目だ」と取材側は判断した。
結果、直撃取材で家のインターホンを押した。


えーと、今回の事件自体は「私有地(マンション共有地)に入ったこと」の是非だからちょっと離れているんだろうけどね。例えばインターホンが敷地の外からじゃなく、いったん玄関まで行って玄関で押さないと駄目な作りの家とかでは、どうなるんだろう。


そういえば「進め!電波少年」で、よくアポなし取材で松村邦洋が怒られたり、モザイクが家や被取材者にかけられたりしてる場面がよく有ったが、あれはそういうところまでは了承してくれた、まだ寛容な人たちで、「取材したこと自体も流せない」ような取材というのも沢山あったのだ、とも聞く。


一杯のかけそば」、無断大盛りのおやじさんの行動は・・・。

この議論で「ピザ屋のビラも駄目なのか、政党のビラだって社会情勢を知るのに役立つ、制限は知る権利を妨げる」という主張があった。
いやあくまでも今回の事件は、住民側の決定とその旨の掲示を経ての話だったから、今回、上のような主張を認めなかった判決は理屈としては分かるけど、仮に上の判決批判を基にして、そこからあさっての方向にいって、こんなことを考える。

【シミュレーション】
ビラ投函お断りのところに、ビラをまくやつがいた。
某政党のビラ→迷惑だと思われ通報、逮捕。
ただのピザ屋ビラ→同上、逮捕。

10周年記念で豪華無料券付きのピザ屋ビラ→同じく違法だが、住民もこれだけはニコニコなので逮捕されず。


やっていることを、形式的に犯罪としようとすればできるんだけれども、実際にそれがお得(もしくは得でも損でもない)なんで、”被害者”が文句言わずに、それで解決している・・・ということは結構あるんだなあと思ったんです。

こういうのを「被害者なき犯罪」というのかというと、それは違うらしいけれども(笑)
ウィキペディアの「被害者なき犯罪」

もともとポストへのビラくばりって、そういうものとして扱われる「可能性が高く、そういう経験もある」とずっと思っていた人がいた。しかし、ごくたまにはそう扱わない人もいる・・・ってことなのかなあと。

そこで表題に関係してくるのですが、「一杯のかけそば」って話・・・もうみんな知らないかな。検索してくれ。
あれは貧しい親子が一杯のかけそばをお店で食べるとき、店の主人が勝手に大盛りにして出した・・・ってな話だけれど、注文した人が明確に「かけそば一杯だけ」と言ってるのに、勝手に大盛りを出してしまうのは一種の食品偽装ではないか(笑)、と。


こち亀」に、ドロボウなんだけれども几帳面で清潔好きなため、だらしない家に忍び込むと、ついつい掃除や皿洗い、赤ん坊のおむつ交換までやってしまって(不法侵入はしていても)つかまらなかった、という男が出てきたな。

つうかあれか、12月24日の夜に私有地に無断侵入して子どもにおもちゃをおいていく(各地で多発する)不審な老人もいたっけ。

こういう「みんなが得するから文句を言わない犯罪」というような概念は、法律の世界にあるんですかね。
シロートなもんで、その基本的なことが分からない。

実は一杯のかけそばの話、「この主人は『詐欺』なんじゃ?」と書こうとしたのだが、どうもウィキペディアの「詐欺罪」を見ると、それは構成しなさそうなんて書かなかったんだ。
ええい、法律屋というのはややこしい概念ばっかりこしらえるね。

詐欺罪は以下の4つの段階を経過した時点で既遂となる特殊な犯罪で、単に「騙した」だけでは成立せず、社会一般でいう詐欺の概念とはやや乖離しているのが特徴。

1・一般社会通念上,相手方を錯誤に陥らせて財物ないし財産上の利益の処分させるような行為をすること(欺罔行為又は詐欺行為)
2・相手方が錯誤に陥ること(錯誤)
3・錯誤した相手方が、その意思に基づいて財物ないし財産上の利益の処分をすること(処分行為)
4・財物の占有又は財産上の利益が行為者ないし第三者に移転すること(占有移転、利益の移転)

書いていて思い出した。

無断で、相手の注文と違うものを「偽装表示」して出しても、”被害者”が得をすれば問題ないか否か、を問う法哲学論文(違う違う)がある。

原テキストと、翻案の朗読劇の脚本が見つかった。

http://cosmoshouse.com/works/loaves/loaves.htm
魔女のパン
原作 O・ヘンリー 原典 "Witches' Loaves" 訳者名 : 山本ゆうじ
From "Sixes And Sevens," from Project Gutenberg (6sn7s10.zip)他

ミス・マーサ・ミーチャムは、街角の小さなパン屋をやっている。とんとんとんと、階段を三段上がって扉を開けると、ベルがちりんちりんと鳴る、そんな店だ。

 ミス・マーサは四十歳で、通帳には二千ドルの預金があり、差し歯を二つと、いわゆる同情心を持ち合わせていた。もっと結婚運に恵まれない女性でさえ結婚していく中で、彼女はずっと独身でいた。

 ミス・マーサは、このところ、週に二、三度店に来る、ある客に興味をひかれていた・・・

もともと、オー・ヘンリーの作品ってほぼ全部落語に翻案できるようなおかしみがあるが、これも面白哀しい小品だ。

http://tokyokageki.selfip.com/hon/furupan.doc
では、朗読劇に翻案された「古パン」の脚本がダウンロードできる。



いやー、最初の話からとんでここに着地(不時着?)するとは自分でもまったく予想外。