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編集委員辞退のご挨拶(椎名 誠)
本誌は来年創刊15周年になります。このガチガチ硬派の週刊誌が構造的な出版不況やますます台頭する反動勢力の渦中でよくここまでやってこられたものと、つくづく感心しています。思えば創刊の頃に本多勝一さんと筑紫哲也さんの来訪をいただき、本誌の編集委員のお誘いを受けました。尊敬する両先輩であり、さらに作家として私淑する井上ひさしさんも当時は編集委員でしたので、・・・・・・馳せ参じることとなりました。
けれど3年ぐらいで、まったく正直な話、誌面に書いてあることで分からないこと、理解できないこと、興味のないこと、などというのが結構沢山あって、こんなふうに誌面内容を理解できない愚かな者が編集委員というのは相当問題であるな、ということを痛感し、今流行りの言葉でいえば偽装そのものでもありますからこれは早めに辞退しようと思いました。
しかしそんな折りに本誌の表紙の写真を担当しないか、と言われ、写真好きのぼくにはたいへん嬉しいことで・・
・・・誌面内容はぼくにはさらに難しくなり、やはりこれはついていけない、と・・・もうそろそろ本当に本誌から全面的に引き下がらせていただきたい、と頼んでおりました。第一走者としてはあまりにも長めに走りすぎ次の走者にバトンが届かないうちに倒れそうではありますが、この12月をもって編集委員を辞退させてもらいます。表紙写真のほうは次の準備もあるとのことで3月までやらせてもらいますがどうぞお許しを。
これからの『週刊金曜日』の活躍を期待し応援もしていきます。さようなら。
内容が難しくてわからなかったのでやめる、とはなかなかに面白いが、実は編集委員が分裂して騒動になった、辛淑玉委員辞任騒動・・・・同性愛者が「オカマ」と自称する時にそれは差別となるかというまことにスコラ的な大議論の際、まさに椎名は「考えたこともない、まったくわかりません」という正直というか何というかのコメントで乗り切ったのだった(笑)。
そもそも、本多勝一といえば「ファッショ反動出版社・文芸春秋に協力しておきながらの進歩的活動など偽善で卑怯でけしからん」というような話をしていた人なので、「風まかせ赤マント 」を週刊文春に好評連載中の椎名氏、これで収まるところに収まりましたかの。