せっかくだから韓国つながりでいくつか。
アフガン「大量人質事件」を生んだ韓国人の宗教への異常な情熱=黒田勝弘
2007年9月18日 SAPIO
数年前、ソウルからモンゴルを訪れた折、いくつかの興味深いことがわかった。まずモンゴルへの航空便だが、以前は日本からの便が多かったが、今やソウルからの方が便数が多くなっていたことだ。したがってモンゴルを訪れる外国人でも、日本人より韓国人が多くなり、モンゴル滞在者でもそうだった。
その背景の一つは、モンゴル人の韓国への出稼ぎが増えたことだが、もう一つ、韓国人のモンゴルでの宗教活動が活発化していることもある。例の統一教会をはじめ韓国のキリスト教団がたくさん進出している。
(略)
先年、激烈な民族戦争が起きた旧ユーゴでも、韓国人の宗教的情熱が話題になった。多国籍軍の軍事行動に際し外国人の決死(?)の国外脱出が行なわれた時、何とそこに10数人の韓国人が含まれていたのだ。後でわかったことだが、彼らは統一教会のメンバーだった。
さらにイラクのフセイン政権が倒れた直後の2004年、韓国人ビジネスマンが武装勢力に拉致され殺害された。依然、戦火が続くイラクで早くも韓国人ビジネスマンが活動しているのか、とそのビジネス根性に驚かされたが、彼も実は牧師志望のキリスト教徒だった。その死をめぐって韓国では「殉教者論争」が起きている。
韓国は“キリスト教王国”だ。全人口の3分の1、1500万もの信者がいる。全国いたるところ教会だらけだ。とくにソウル首都圏の夜は、教会の赤いネオンの十字架が夜空に点々として見事である。
韓国のこの“教会パワー”が豊かになった経済力をバックに今や海外にまで噴出している。ある調査によると、布教や奉仕活動で海外に派遣されている宗教人は世界175か国、1万6000人に上るという。これが最近、国際社会を驚かせた、アフガニスタンでの韓国人大量拉致事件の背景である。
それにしても韓国人の宗教的情熱はすごい。たとえば、ぼくの韓国生活は30年近くになるが、これまで何回誘われたことか。
とくにキリスト教系の知り合いからは今でも会うごとに「教会に行きましょう」といわれる。タクシーの運転手にも結構これがいてよく話しかけてくる。カーラジオで牧師の説教ばかり流しているのもいる。外国人のぼくにまであれほど熱心に“布教”しようとするのだから、情熱的というしかない。(略)
キリスト教でいえば、米国の影響を強く受けていることも関係あるようだ。米国民主主義が“人権外交”に象徴されるように、祖先のヨーロッパより純粋かつ原理主義的になっているように、韓国キリスト教もまた米国では、より「一途に」なっているように見える。
韓国キリスト教の情熱ぶり、つまり「押しつけがましさ」には米国流の影響がある、というのがぼくの仮説である。韓国人の宗教的情熱だけは、ぼくら日本人には太刀打ちできないものだ。(産経新聞ソウル支局長)
以前、クリスマス・イブの日に自分はこう書いたことがある。
■[時事][宗教][読書][歴史]キリスト生誕日に際し、日本教徒に与える書
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20061224#p3
日本は戦国時代にフランシスコ・ザビエル(実はイエズス会でも、彼はエース中のエースだったそうな)が上陸し、その後、明治時代も、また終戦直後も、「迷える東洋の異教徒を救わん」との使命感を持った良質の信仰者と圧倒的な物量、優れた技術と文明がセットになって大量に流入した。
しかし、ものの見事に失敗(笑)。
前にも書いたが、司馬遼太郎が「なんかあんなに皆努力して、こんなにクリスチャンが少ないのは逆に申し訳ない気がする」と恐縮したぐらいだ。
日本がどうもうまくいかな過ぎたとも言えるのだが、それにしても儒教の伝統国で日本より鎖国を長く、しかも徹底して続けていた国がいま、三分の一がクリスチャンというのはいつも聞くたびに驚く話だ。
アジアだとフィリピンぐらいか?でもフィリピンはもっと布教が早い。
19世紀以降に本格布教が始まって、ここまで浸透した韓国は、やっぱりキリスト教的には優等生だ。
(米国の宗教右派は「アジアのイスラエル」というノリでもっと韓国を贔屓することはないのでしょうか・・・)
さて、じゃあ、なんででしょう。
「日帝の支配が苛斂誅求を極め、その心の癒しのために神の慈悲にすがったのだ」
というような主張も、もちろん一仮説として検討すればいいので排除する必要はない。
その他はなんだろうか。
「近代文明の波及とセットで普及した」
「絶対性を求める朱子学と親和」
「朝鮮戦争でのアメリカとの深い関係」
「手塚治虫のような『この人がいたから布教された』という天才が現れた(文●明?)」
まあ、なぜだろうね。あとで調べてみよう。
ひとつ気になっているのは「韓国ではキリスト教の書籍の中でも『黙示録』の売れ行きが際立って高い。これは他の国をくらべても突出している」(山本書店主・山本七平のことば)
これが謎を解く手がかりになるのかどうか。