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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

未来予想「野中広務が小沢一郎によって復活する日」。

昨日、浅羽通明の時評集

天皇・反戦・日本―浅羽通明同時代論集 治国平天下篇

天皇・反戦・日本―浅羽通明同時代論集 治国平天下篇

を読んでいました。本格的な感想は後回しにするが、20年以上の時間的な幅がある時評をあらためて読み直して気づいたのは「ああ、昔は”竹下派的なるもの”ってやっぱり日本の主流だったんだなあ・・」・ということでした。この本の中で、別にそうあからさまに書いてるわけでもなんでもないんですが。

それが崩壊していくさまを、いちどここでも
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20040830#p1
と書いている

さてしかし、今回の選挙で民主党はその竹下派経世会)の異端児・小沢一郎が党を率いて参院第一党になりました。
だが、憲法衆院も制圧しないと政権は握れない。小沢としては衆院で勝つ体勢を作りつつ、解散に追い込みたいところですが…

民主党の立場から何が効果的かと考えたとき、この「野中広務招聘」に思い至りました。


これは能力、意図などを総合し、少なくとも両者にとって非常に悪くない取引だからです。

「アンチ小泉政治」の象徴とモチベーション

野中はもう80歳を超えたが、その政界引退の経緯はほとんど”切腹”であったことはご存知のとおり。党総裁選で小泉下ろしを画策するも、逆に一致団結箱弁当、の竹下派が小泉によって思うまま分断され、政治的に完敗。毒饅頭をお前は食ったとか捨て台詞を吐いたわけです。
今も野中氏はテレビで政治評論などをしていますが、年齢的にも考えていることはほぼ一点、「小泉政治を否定したい」という部分です。いま、民主が千載一遇のチャンスを捕まえた。ここに乗っかれば再び実際政治上の力を得られる。

いわゆる「保守ハト派」の象徴として・そしてその結集

野中氏は、また竹下派伝統の親中国路線でも”小泉にコケにされた”との思いに満ちています。
日本においては現実政治はまったく別に、メディア・論壇はやはり軍事外交のタカハト神学論争が一番の争点。
これが大きいのは、いかに背後に権力闘争があっても、ここを論点にして政治勢力が陣営を変えるとそれほど批判されないという点です。
名前を挙げれば谷垣禎一(とその派)、加藤紘一、またいつのまにかハト的な言動を多くする山崎拓(とその派)、謀略と引き抜きでは世に並ぶものなき野中が後ろから、また表では象徴として「小泉安倍は国を危うくするタカ派、それに対抗するために小異を超えたハト派結集を」と呼びかけたら、今、自民党で冷遇されている山崎や谷垣が出るときの障害は非常に小さくなる(※もっとも次の内閣改造で安倍が非主流を取り込む可能性もあるが)。おまけだが、社民党とかも来やすくなるかも(笑)いらん(笑)。
また、「弟子」である鈴木宗男新党大地との結束もまた固くなるだろう。


さらにいうと、まあ結果的にだが安倍が持つカード、実績は中韓との関係改善だ。野中と中国の太いパイプがもしまだ生きてるなら「中国が日本になにか譲る際、それを民主の働きかけ、という形にしてこっちに得点をくれんか?」と頼むような裏技もできるかもしれない。それは無理でも安倍―中国の「本質的に敵同士だからこそ見極めて握手できる」という奇妙な同盟に楔を打てる、かもしれん。

マスコミとのパイプ

野中広務が「現場記者がデスクに送るメモはすべて目を通せる」というほど、当時の番記者を手足のごとく使っていて、その情報力を保っていたという説はよく耳にする。野中全盛時の番記者って、いまけっこう年功序列で出世してるらしいんだよ(笑)。このパワーがそっくり手に入る。

格差社会と弱者保護の象徴、そして対麻生太郎

もともと竹下派が「擬似ハト派」だったのは、”日本的な、もっとも日本的な”ともいえる「まあまあ君の気持ちは分かるけど、ここはひとつ、ま、ね。僕の顔を立てて。この借りはあとで必ず。君もまあここはちょっと譲ってだね・・・穏やかに穏やかに」という和の政治でなんでも片付けていたからで(笑)。
それはいわゆる公共事業政治もそうで、これを八方に心配りして片付けて、そして仲介料を懐に・・・なわけです(笑)
しかし、地方の中には「小泉さんの”改革”じゃ死んじゃう。あの時代はよかった」という声も大きい。野中氏は、弱者の味方を標榜するのにうってつけでしょう。それが「新バラマキかよ!」という都市住民の反発を招くかどうか。ネットカフェ難民とかニートにも野中がアピールするかは不明。
麻生太郎は別に項目立てる


対公明(創価学会)兵器

もともと1993-94年の自民党下野時代、反創価学会の急先鋒だったのに一転、自公連立の仕掛け人となった野中氏。
はっきり言っちゃうと、コレはスキャンダル脅迫を織り交ぜてのことだったらしいのね(笑)

野中広務 差別と権力 (講談社文庫)

野中広務 差別と権力 (講談社文庫)

この作品からは、他の項目でも多くを参考にしている。
それをここで論じた過去エントリ。
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/searchdiary?word=%ba%b9%ca%cc%a4%c8%b8%a2%ce%cf
暴力団との密会ビデオがどーのこーので、微妙に格闘技界にも関係したりしないわけでもないのだが(笑)、それはさておき、そういう急所をがっちりと握っている。また、上のハト派云々もからんで、平和主義的傾向が強い創価学会へのゆさぶりともなる。

麻生太郎

上の「過去エントリ」で見てもらいたいが、「野中広務 差別と権力」には次のくだりがある。

・・・「総務大臣に予定されておる麻生政調会長。あなたは大勇会の会合で『野中のような部落出身者を日本の総理にはできないわなあ』とおっしゃった。そのことを、私は大勇会の三人のメンバーに確認しました。君のような人間がわが党の政策をやり、これから大臣ポストについていく。こんなことで人権啓発なんてできようはずがないんだ。私は絶対に許さん!」

 野中の激しい言葉に総務会の空気は凍りついた。

総務会で、ではなく「大勇会の会合」で確かに麻生はこう言った、という事実確認が取れるかどうかにもよるが、麻生の口の悪さや同書へ抗議などもない?ところを見ると(まあ、この書き方は「総務会で野中が『麻生が言った』と言った」というものでそれ自体は議論の余地無かろう)、事実関係が仮にそうなら、少なくとも私は一番の麻生の資質問題になりえると思っている。
面白いことをいう明るいおっさん、という麻生のあまり確固としてはいない大衆人気を減じさせる効果もあるだろう。少なくとも野中が表舞台でこれを持ち出して、面と向かって批判すれば(もっとも野中氏はこれは微妙な問題なので自分からは言わないかもしれない。それはそれで理解できる)。

単純に、京都・関西に強固な地盤がまだある。

これが今の自・民の競り合いに上積みされたら効く。



具体的にはうまくしたもので、今は衆院にも参院にも比例代表があるわけで。
近畿ブロックの上位、もしくは微妙な当落線上に順位をおいて、民主党候補者として体力の範囲で演説でもやらせればいいだけです。効果は、おそらくある。


・・・と書いたが、どうなるか。野中氏はパブリックイメージとして「暗い陰謀家」「改革嫌いの守旧派」「新北朝鮮」というのもあり、マイナスも相当なものだ。民主党の支持者は「改革派もういいよ」なのか「真の(もっと進んだ)改革は民主こそできる」の寄り合いでもあり、そこが分裂するかもしれない。
また小沢一郎もその名を知られた側近政治とイエスマン好きなので、一緒にやったら早晩確執が再燃するかもしれない。
そもそも自分は、小泉による同氏の政治的敗北と失脚、「野中政治」の終焉を基本的には喜ぶものだ。



だが、仮に民主の立場に立ってみれば上に書いたとおり。
「野中招聘」いかがですかね?

(了)