この話、途中で尻切れトンボになっていたんで書いておこう。
格通の窮状を救うため、査問会議にかけられていた朝岡秀樹氏が急遽イゼルローン要塞に戻り、防衛戦の指揮をとるよう命ぜられたということはご存知のとおり
(だから銀英伝ネタはそろそろ通じないって)
FIGHTERでのインタビューで朝岡氏が話したコンセプトは、以前から聞いたことがある話だったがそれを再確認できた。
「見る側」「やる側」の二分法はやや古いが、それをあえて使うと多少「やる側」よりにシフトさせる。そして、誤解を恐れずいえば「縮小再生産」「撤退戦」の指揮者となろうというのだ。
FIGHTER VOL.2 (AUGUST 2007)―格闘マガジン (晋遊舎ムック)
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うちの会社(※ベースボールマガジン社)、30誌ぐらい雑誌があります。「バトミントンマガジン」とか「綱引きマガジン」とかがあるんですよ。そんな感じで、やってる人向けの雑誌というスタンスで生き残っていくのは全然問題ない。多分そのほうが安定して50年なり生き残っていける雑誌なんで、それはそれで僕はいい……
ベーマガはひところ、ターザン山本が「週プロと格通で全社員のボーナスを稼いでいた」といわれていて、格通が一クラスマガジンになっては構造全体を変えないと駄目なんだろうが、赤字よりはましって部分もあるしね。
そしてやる側より、というのは必然的に技術論ということにもなる。
魔裟斗とかかっこいい選手がいるからみんなが格闘技を見るという段階はまだブーム…最終的に技術にみんなが惹かれるような地盤を格闘技が築けるようにしたい
このコンセプトは、朝岡氏の前線復帰に先行して生まれた「FIGHT&LIFE」なんかに通じるのではないか?
しかり。
FIGHT&LIFEに俺がいたらいいのになぁ、と思いますね。
昨日見た「格闘ボディメイキング」に俺がいたらいいなぁって(笑)思いましたね
もともと今回の格通編集長復帰って、朝岡氏にとっては待ってました、復帰だ万々歳ってもんでもなくて「え?今の技術ムック編集でもっとやりたいことがあるんだけどなあ……」みたいな思いもあるらしい。少なくとも本人はそうは話している。
FIGHT&LIFEに共感するのは当然で、朝岡秀樹氏や高島学氏らは、もともと問題意識を共有していたのだわね。
以前、小生も出席した「ガチMAGAZINE」2号を引用しよう。
あ、まだ購入できるんだ。驚き。
ガチ!―MAGAZINE (Vol.2) (Inforest mook)
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高島 朝岡さんに関しては、僕は当事者ですから言えるんですけど、あの人は本当に戦っていた。格闘技界の慣習や会社と、それで疲れが原稿に出ちゃう。それは読者の方はいくらでも叩いていいと思います。お金を払って買ってくださる、その人たちは編集者、ライターの事情なんて関係ないから、どんどん叩くべきでしょう。ただ、そういう中で朝岡さんっていう人は真剣に戦って、真剣に向き合っていたんです。
グリフォン 何かを変えたかったから……。
某っち 僕は嫌いじゃなかったな。
グリフォン 戦っているというのはノーフェイクっていうキャンペーンについて?
高島 それだけじゃないんですけど、そのノーフェイクにしたって、堂々と謳っていれば、編集部内だけでも論議が起きますからね。それにメモ8さんのように、整合性を求める人も当然出てくる。僕もまだ若かったんで、そんな彼の辛さが理解できずに、ガチガチになって「格通」を飛び出したっていう感じだったんですけど……。でも、それだけ朝岡さんの原稿は、コアなファンに読まれていたとこいうことですよね。じゃあ、商業誌として正解じゃないですか。
高島氏のファイライ(略称)コラムにもこうある。
http://www.fnlweb.com/column/2007/06/post_6.php
、自分たちが以前在籍していた
旧某格闘技雑誌編集部で話し合われてきた、
格闘技雑誌の未来系とでもいえるこの本のコンセプト……
(略)
・・・とはいえ、プロイベント人気に左右されない、
つまり、好景気になっても、購買数の増加を求めずに創るという、
実は硬派な決断は、当然北米のMMA人気の膨張で、
雑誌の売り上げが左右されることなんてないものを目指している(はずだ)。
山本七平(山本書店主)も書いていたが、編集者が集まって飲むときの一番の話題は「俺が出したい理想の本(雑誌)」だというから、さぞ熱い議論があったのだろう。その挑戦がいま、リアルに始まったということかもしれない。
そういえばこの執筆のためにファイライ(略称)を読みなおしてみたのだが、気づいたのは結構広告が多いことですね。SRS−DXという雑誌は売り上げは合格だったが、広告がうまく集まらなかったため廃刊となったという説もある。
「収益」という話は朝岡氏もしていて、肝心の部分は「カット」となっているが
ある程度収益を上げる必要があるので、そこを大事にする意味では一番ウチができている
と胸を張っている。
さて、最後に具体的な新格通の企画で面白いものを。それは一風変わったテクニック解説にある。
もともと二人組で技の流れを写真で見せると、それだけでアート的に楽しめるだろう、という狙いがあるというが、昔の「ゴング」の空中殺法連写分析みたいなもんでしょうか(笑)。
ただ、最初にあった「今の進化した柔術テクニックは、MMA(NHB)でも通用するのだろうか?」という企画は、やっぱり格闘技オタクの間では考えられていた話で面白かった。なるほどなるほどと。
しかし、最新号で空手技術の解説のうたい文句が
「タックルなんて実戦ではできません!」
で、ありゃ、どうやって空手はタックルを防ぐのだろう、とわくわくして読んだら「相手がナイフを持っていたらタックルしても刺されるから」。
・・・いや正しい、正しいんですけどね(笑)。
柔術のMMA論にしてもちゃんと「柔術の中で技を進化させるのはそれはそれですばらしいこと、MMAでは有効でなくてもなんら問題は無い」とフォローしているし、朝岡氏はZSTもいち早く評価した人だ(というか、出場したんだっけ)。
ただ、こういう「ホーリーランド」的発想も一個人としては読んでみたいのだが、たとえば最初の朝岡氏の話で言えば「綱引きマガジン」に「この綱の引っ張り方は、実際の現場で重いものをロープで引っ張るときに役立つのだろうか?」という記事はたぶん無いわけで(笑)。
いや、これは朝岡氏の矛盾とかではなく、つまり格闘技を競技とか、やる側とか、1スポーツのクラスマガジンと位置づけるにしても通常のスポーツとやっぱり違うところがあるんだよ、という本質的な意味を考えさせる傍証に図らずもなっている、ということではないかと。
そういう点では今後頑張ってほしいものです。正直、私も最初の朝岡体制では、その本質を発見できなかった面もある。
ただ、ネックなのはおいら、ここ数年ですっかり「格通とは買わなくていいもの」という認識が刷り込まれ、習慣付けられてしまったんだよ(笑)。これは仕方ないことでR。
そういう習慣とも闘ってください(笑)。
ああ、なんかすごく長くなってしまったな。
他のエントリはのちほどに。