トルコの総選挙(与党のイスラム系政党が大勝)と、その後の展開は興味を持って眺めていた。
ご存知の人はご存知なので、詳しい話は省略するが、トルコは20世紀初頭に「啓蒙専制大統領」とでもいうべきムスタファ・ケマル・パシャ(のちにケマル・アタチュルク(国の父)と称される)が、とんでもなくドラスティックな西欧化・近代化を実施。アラビア文字をアルファベットに変えるなどの大改革によって、ヨーロッパと中東の間に屹立する、今の特殊な国柄をたった一世紀の間につくっていった。
これは世界近代史の中でも驚くべき奇跡だろう。
しかし、同時にトルコ世俗主義は女性が「髪を隠さねばならない」というイスラムの風習を一掃したのはよかったが、スカーフをかぶりたい女性にも「職場にスカーフをして来るのは禁止する」という形になった(そうでないととても無理だったろう)。
トルコは西欧的ではあるが、民主主義が完全に機能しているわけではなく、むしろ選挙が自由に行われた場合は、生活に密着しつつ伝統主義の後押しも受けるイスラム政党のほうがケマル主義者より近年は強い。だから選挙はイスラムが勝つのだが、「原理主義ではないか」ということで軍(軍は徹底的な世俗派で「世俗主義の守護者」とも言われる)がクーデターをほのめかすなどして押し戻してきた。
その押し合いへしあいの結果、イスラム主義者だが妥協もこなすエルドアンという男がイスラム系「公正発展党」を率いて首相となり、経済運営もうまくいって今回選挙に圧勝、だが大統領(儀礼的な国政トップ。議会への拒否権も持つ)の選出では、穏健派が選出された・・・・などというのが今回の構図。
で、本日8.12に朝日新聞に掲載された水平線/地平線というトルコ紹介のコラム記事(安東建記者)が面白かった。
要約
◆トルコは00年、01年に経済危機に見舞われ、01年は−9.4%ものマイナス成長。だが、IMF改革も功を奏したが公正発展党の改革路線で、7%の成長。3年前は1トルコリラ=80円だったが、今は1トルコリラ=100円!
(余談。そのころトルコリラを買っていれば大儲けでした。そういえば最近、週刊誌レベルでも「トルコ投資が今、注目!!」みたいなものを扱っている)
◆その半面、教育制度や刑法、酒類販売などではイスラム的な思想背景がうかがわれるもので、世俗主義側だったいままでの大統領は拒否権を行使、緊張関係にあった。
◆老舗新聞は「世俗主義を守ろう」的なキャンペーンを張ったが、振興の進歩的新聞は「民主主義で行こう、差別から開放され、どんな宗教にも対応する。学校でスカーフを被ろうとラッパーのような服装だろうと認められる。それが民主主義だ」
と宣伝した。
◆結果としては親イスラム与党が46%で勝利。
「イスラム原理主義が選挙で勝利して政権をとろうとすると、世俗主義を信奉する軍部がクーデターでそれを阻止する」という、矛盾と逆説に満ちた国、それがトルコだ(アルジェリアもそうだけれど)
「軍」があらゆる文明で持つ近代主義性、ということも感じさせるが、とりあえずトルコはそこで膠着することをよしとせず、どちらの方向に行くかはわからねど一歩を踏み出し始めた。
伝統的親日国としても知られるトルコ、その行方は。
イスラム社会全体にも影響を与えうる地域大国、「自由と繁栄の弧」の一翼を担う(のかな?)国としてわれわれも注目したい。
繰り返しだが、
またここでは政治などの大状況はほとんど取り上げられないが、

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このシリーズを読むことは、いやしくも知的大衆としては絶対的に必要であります。
(了)