先週、書評が見つからないとか見つかるとか言ってたのはこれだった。
「悪魔的天才」という言葉があって、自分は「エアーウルフ」ってドラマのOPで覚えたけれど(笑)、その後、一番この”悪魔的天才”という言葉がぴったり来るのはこの人というイメージになった。
あくまでイメージで、彼の著作は二冊程度しか読んでいないんだけどね。
http://book.asahi.com/review/TKY200706260198.html
シュミット・ルネッサンス―カール・シュミットの概念的思考に即して
[著]古賀敬太
[掲載]2007年06月24日
[評者]野口武彦(文芸評論家)■21世紀の危機に〈劇薬〉となるのか
論語郷党篇(へん)に「薬を饋(おく)る」という言葉がある。孔子が人からもらった薬を口に入れなかったという話だ。荻生徂徠の注釈では、古代の薬は毒が強く、眩暈(めまい)がするくらいなのがよく効いた。人に毒を送って死なせることを「饋薬(きやく)」とも称したという。
こんな漢語を思い出したのは、本書の著者がカール・シュミットの《政治的なものの概念》を「カンフル剤」にするならともかく、「劇薬」として服用するのは要注意だと述べているからである。
一九八五年に九十六歳で死んだカール・シュミットの政治理論にはたっぷり毒性があった。その名前が囁(ささや)かれる時にはいつも「悪魔的」「魔性の」「危険な」という決まり文句が付けられた。
死後もなお依然として「ナチに加担したという覆うべくもない事実」に対する敵意は氷解せず、「ナチの桂冠(けいかん)法学者」というレッテルが剥(は)がされることはない。それにも拘(かか)わらず、二十一世紀の世界が迎えた新たな危機に際して、そのシュミットが再び注目を浴びている。それも「右翼ではなく左翼による《シュミット・ルネッサンス》」なのが特色だというのである。
本書は《主権》《憲法制定権力》《独裁》《戦争》などおなじみのシュミット独自の概念を学説整理した研究であるが、それらを現代の地球規模におけるグローバリゼーションの光で照らし返しているところに新味がある。
たとえば、イラクをテロ支援国家と見なして戦争を遂行するアメリカの《正義の戦争》観を批判する根拠に、反アングロサクソン普遍主義に根ざす《正戦論批判》を持ち出して再評価する見方。著者はこれを「過激な道徳的原理主義に対する解毒剤」と形容する。もし望むなら、日本がアメリカの原爆投下や極東裁判に異議を申し立てる論点も見付けられるだろう。
ワイマール憲法に墓穴を用意したシュミット理論の「饋薬」は、薄めたり、中和したり、イイトコドリしたりできるとは思えないが、議会制民主主義が戯画化した現代日本で《シュミット問題》を考える糸口として興味深い。
◇
こが・けいた 52年生まれ。大阪国際大教授。『ヴァイマール自由主義の悲劇』など。
シュミット・ルネッサンス カ-ル・シュミットの概念的思考に即して [ 古賀敬太 ]
- ジャンル: 本・雑誌・コミック > 人文・地歴・哲学・社会 > 政治
- ショップ: 楽天ブックス
- 価格: 4,644円