INVISIBLE Dojo. ーQUIET & COLORFUL PLACE-

John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

「総連処分」が今までできなかったわけ、の一例

朝鮮総連の財産接収は今後の課題となるのだが、ちょっと埋もれていた過去の本をご紹介。
http://books.yahoo.co.jp/book_detail/06728430
ブラック・ファックス あるいは「昭和」から「平成」、時代を読む
黒田清/著 黒田ジャーナル/著

という本がございます。初版は1990年。黒田清氏がナベツネとの確執によって読売新聞を退社したのが1987年だから、黒田ジャーナルができて間もなく、ということになる。

黒田氏の退社に至る経緯は

渡邉恒雄 メディアと権力

渡邉恒雄 メディアと権力

に詳しい。


黒田清大谷昭宏のほか、何人かのスタッフが持ち回りで週刊プレイボーイ誌上に書いていたコラムを集めたものだそうだ。


黒田清大谷昭宏と言えば読売時代は押しも押されぬ敏腕記者であったし、そのスタッフもまた「黒田軍団」の元読売記者が多かった。さぞかしコラムでも、社会の事情やデータに通じている、のだと思うが・・・・。

231〜233Pに
朝鮮人いじめの原因は日本政府だ」なるコラムがある。
1989年に国会で、朝鮮総連とはいかなる団体であるか、という質問(質問者はハマコー)への答弁があり

朝鮮総連は日本の公安の維持にとって無視できない団体と考え、監視を続けている」
「(非常に危険な団体とみてよいか、という問いに)おおせのとおりと私どもは考えている」との内容だった。


この影響で?朝鮮学校生への嫌がらせが増えたことを批判するのがコラムの趣旨だが、こうある。

日本はアメリカの動きに追随し、朝鮮の南北分裂の当初から朝鮮民主主義人民共和国北朝鮮)と敵対する姿勢をとってきた。敵は本能寺、国会では、北朝鮮朝鮮総連と友好関係にある社会党攻撃のため、自民党公安調査庁や警視庁関係者から「朝鮮総連は危険な団体」という答えを引き出してみせた。

その発言には何の根拠もない。こんな発言を野放しにしている日本の政府、海部(註:当時の海部俊樹首相)さんが同じ考えに立っているのはいうまでもないだろう。これでは”チマ・チョゴリの生徒たちは危険な人たちの子供”とPRしているに等しい。暴行・暴言をけしかけるようなことをしておいて、なにが再発防止のために努力する、だ。いい加減にしてほしい。


この件ではマスコミも同罪だ。「危険な団体」あるいはその後に出てきた「朝鮮総連反日教育」発言がいかに一方的で無責任なものかは明らかだが、それを追及する報道は見当たらなかった。これも、ほとんどのマスコミはうわべはともかく、北朝鮮朝鮮総連に対して政府と同じく「危険な団体」意識を持っているからだろう。

同書は黒田清と黒田ジャーナルの連名だから、黒田氏や、また黒田ジャーナルを共同で設立した大谷氏も文責を負っているのだろうが、これを書いたのは、両氏から一年遅れで読売を退社した瓜谷修治という方である。
検索してみると他に1、2冊本を出している様子。


ちなみに若手の矢野宏という方は122Pでこんな文章を書いている。

いま、日本で暮らす韓国・朝鮮人は約67万人といわれている。かつて日本が植民地として朝鮮半島を領有していた時代に強制的に日本に連れてこられた人たちと、その二世、三世だ。・・・帰化を迫られ、やむなく帰化する一世、二世が年に6000−7000人もいる(申請はその3−4倍)。

「強制的に連れてこられた」も「やむを得ず帰化」も、丸ごと、全体がそうであると書いているのが特徴。


お若いの、時は昭和から平成に入ったばかり。
当時は、別にこういう文章に突っ込みが入るような状況じゃなかったんですよ。


そんな、時代の一風景でした。
おわり