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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

「J-CAST」の特質をあらためて考える

ある社説比較記事

http://www.j-cast.com/
J-CASTニュース ビジネス&メディアウォッチ」についてひとこと申し述べたい。
その前にまず、おなじみ自動ソフト「社説比較くん」から。
http://massacre.s59.xrea.com/othercgi/shasetsu/2006/index.xcg?num=172

たいへん一目瞭然で面白いのだが、それをJ-CASTニュースは・・・
http://www.j-cast.com/2006/12/01004080.html
「防衛「省」に反対 社民・共産・朝日だけ!」


この記事の注目点は、事実関係や論評内容の是非ではなく、記事の「取捨選択」にある。
たしかに社説の比較は興味深いし、朝日新聞と歩調を同じくすることも多い毎日新聞が上のようなスタンスをとったというのも注目に値する。というか、靖国神社の問題でたしか朝日は「読売も首相の靖国参拝反対を打ち出した。参拝賛成派産経新聞だけだ」と言ってたし(笑)。
ただ、そうではあるのだが、そこにぐっとズームインして、ひとつの記事にする・・・という動き方は、従来のメディアはあまりしない。

メディア「を」見るメディア

J-CASTの特徴はざっくり見る限りでは「IT・ネット『で』ニュースを報じる」のではなく「IT・ネット『の』ニュースを報じる」というところにあるのだと思う。そこから広がってメディア『で』ではなく、やっぱり「メディア『の』話題を」報じているわけで、そしてkろえには一定の需要が絶対にアルのである。
格闘技を見ていれば、谷川さんや榊原さんの暗躍、選手と会社のギャラ交渉、対戦カード変更のごたごた、フリーライターの会場出入り禁止の理由・・・などいろいろ裏側を知りたいわけで、本好きや新聞好きのみならず報道に接している人は、今度はその「報道」自体に着目することになる。


もともと噂の真相の前進は「マスコミひょうろん」で、そして噂真は大いに売れていたわけだし、かの雑誌が撤退してからも「創」はしぶとく生き残っている。読まれないことは無いのだ。


「創刊の辞」を読む

ここで、「創刊の辞」を見てみよう。重要な2点を引用する

http://www.j-cast.com/2006/07/26002249.html
オリジナルコンテンツを配信します
(略)他のメディアのコンテンツを流用するのではなく、このサイトのために作ったコンテンツを配信します。情報の信頼性を確保し、著作権を管理できるようにするためには、オリジナルコンテンツが重要です。十分な取材態勢は取れませんが、オリジナルにこだわりたいと考えています



継続的にメディアをウォッチしていきます
新聞、雑誌、テレビのような情報メディアは、情報を選択し、編集というフィルターを通して配信します。発信者の視点が加わり、それが偏向の原因だという批判はあるにしても、受信者には便利で、楽しめるメディアです。Webでは検索、リンクがこのフィルター役を果たしています。機械的だからニュートラルだとは必ずしもいえません。既成メディアとWebの両者は一長一短です。
両者の長所の部分を活用します。情報源になるべくアクセスして確認する。検索の機能を存分に活用する。ある程度のスキルを要する作業です。メディアをウォッチすることがポイントとなります。とくに、Webに浮遊する膨大な情報をウォッチすることが重要と考えます。



J-CASTニュースは、(株)ジェイ・キャストが運営するニュースサイトです。このサイトのために書き下ろされた独自記事のみが掲載されます。他媒体からの記事の流用はありません。
速報を特徴とする新聞・テレビの「1次情報」と、独自の視点で記事をまとめる「2次情報」の両方の良い点を取り入れた「1.5次情報」を配信します。特に、Web上の情報や日々のニュースを、他から違った切り口から見る「メディアウォッチ」に力を入れます。


JINビジネスニュース

ところで、そもそもJ-CASTニュースって「JINビジネスニュース」から改編されて始まったのはつい最近なんだね。会社自体は来年で創業10年目だが、ニュース開始は2006年7月26日だった。だからウィキにもはてなにもないのか。はてなにはキーワードを作るよ、今から

J-CAST


だいたい、方向性自体はあっていると思う。というのは・・・、臆面もなく昔自分が書いたエントリを再紹介させてもらうが


「ネットの中での報道」についていくつか
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20050321#p3


ブログが新聞に追いつくための部分的戦略
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20050322#p2

・・・多くの記者氏らの「新聞はブログにできないことがある」というのは、単純な話で実際にあります。だからというかしかしというか・・・(略)・・・一面では正しいのであるけど、この「プロのジャーナリスト」という定義がクセモノ。ぶっちゃけた話、この”プロ”ってのは使命感や技術というよりは「書くことで、日々の糧を得られる」という即物的な話・・・(略)・・・要は「書くことで食う」というシステムが新聞やテレビ、雑誌にはあるが、もともと無料で情報に接することが出来るネットを基盤としている以上、今のところブログや掲示板ではそういうシステムが出来ないし、作るのが難しいというだけであるのだろう。

要はこういうことなんですね。で、J-CASTニュースはかなりこのへんをクリアしている。
実際にニュースを書いている人の待遇まではしらんけど(笑)無給ってこともないだろう。

そしてJ-CASTは、母体はhttp://www.j-cast.co.jp/2006/07/services-outline.htmlで、なんかサイト制作やら何やらで食っている会社。
「このニュースで直接儲けなくても、ネットやマスコミでの知名度が高まればいい」という、普通の、何の変哲もない市場原理、商売戦略のベースの上に乗っかっているから強い。恒産無ければ恒心無し、は永遠の真理だ。


1.5の強み

あとひとつの秘密は、これ。

速報を特徴とする新聞・テレビの「1次情報」と、独自の視点で記事をまとめる「2次情報」の両方の良い点を取り入れた「1.5次情報」を配信します。特に、Web上の情報や日々のニュースを、他から違った切り口から見る「メディアウォッチ」に力を入れます。


実をいうと、ニュースソースはきちんと出所を明示し、引用していれば、そこで提示された事実関係を基にオリジナルのコンテンツを作っても何の問題も無い。じゃあなんでほかはあまりやらないかというと、新聞を主人公とする既存メディアが200年かけて作り上げた「功名」と「メンツ」ゆえなのである、単純な話が。


A社がスクープした記事をB社が後追いするのは恥ずかしいことで、残念なこと。ましてや「・・・の報道によれば」などと別の媒体それ自体をソースとするのは言語道断横断歩道。ときどきは例外もあるが、基本原則はこうなっていて、それに基づいて動いている。
というか、昔の日本マスコミ批判では「アメリカの新聞は、重要問題ではワシントンポストも『ニューヨークタイムズの報道によれば』・・・とやる。日本も見習うべきだ」という形の批判もあった。


あとひとつは、「結局んなことやってたら、みんなその元ネタ載せてるメディアに移っちゃうだろ」という正論。
それは当然ですわな。



ところが・・・まずこんなメンツ、業界内の「ゲームのルール」に従う必要も別にないですわな。
これは単なる精神論でらくらくクリア。
もうひとつの方は・・・・・・・昔は自分のA紙から、ネタ元にしたB紙にうつられたらそれは売り上げ減だ。しかし、ネットのクリックはどっちにしてもタダ(笑)。
一部は「直接見ればいいじゃん」と移る読者もいるとしても、彼らが選定したから信用する、ニュースのポータルとして評価、単なる習慣・・・などで残る人もいる。たとえば七割がネタ元になるニュースサイトに移っても三割がJ-CASTに残ればいいわけです。


よく考えたらJ-CASTの大先輩に当たるような存在(やや誇張)である総合格闘技ニュースサイト
「NHBニュース」http://blog.livedoor.jp/nhbnews/では、

エントリ発表ごとにニュースとして発表されるような優良ブログをことあるごとに紹介している
※GAME AND MMA http://gameandmma.blog29.fc2.com/
ヒロシです(涙) http://blog.goo.ne.jp/hiroshi_nielsen/など
 

が、これで直接そこに行く人が増え、NHBニュースの読者が流れたら痛いかといえば、管理運営の当方としては痛くもかゆくも無い。というかむしろそれは希望通りだ。まあ、ここは商売の有無が絡むから一概には比較できないが。



だから、こういう1.5次ニュースサイトは支持を受けるだろう、おそらく。

金看板の価値

と同時に、
「情報源になるべくアクセスして確認する」


力を一応備えているところも大きい。なんとここは

J-CASTニュースの代表者は、朝日新聞出身の蜷川真夫(元アエラ編集長、(株)ジェイ・キャスト代表取締役)が務めます。編集長は、同じく朝日新聞出身の大森千明(元アエラ編集長、元週刊朝日編集長)です。

だから、看板に不足は無い。
取材力というのは人それぞれだが、やはり看板も大事。とくに優秀にして積極的なる人気ブロガーは多々いるが、(日本での傾向という面が強いそうだが)最終的な身元を非公表にしているブログ、ブロガーを「メディアとして他の新聞やテレビと同列には扱えない」と被取材側が見なしたとしても、それはそれなりに合理性がある。ブログは無数にあるから、数としても対応できないとも言えるしね。

そこでかならず取材したい側の「足きり」「選別」はなされてしまうのだが、ここで元「AERA」編集長がトップで、ちゃんとした(ってどんな規模か知らんが)会社がやっているニュースサイトです、というカンバンが生きてくる。少なくとも「門前払い」される確率はぐっと低くなる。実際にJ-CASTニュース、当事者のコメントとかがちゃんと入っている記事多いでしょう。

自由主義、無政府資本主義の究極のネタとして「貨幣は銀行や金持ちがそれぞれ自由に発行すればいい。信用の在る貨幣をみんな使うからおのずと淘汰されて最良のものが残る」という話が在る。

そう、とにかく「実体」よりは「権威」「信頼」の元手が在ること。
J-CASTは「元AERA」「ちゃんとした会社組織」という元手を持って勝負している。これは面白いことになりそうだ。


じゃあ、オーマイニュースJANJANとどう闘う、競う?という話が出てくるのだが、それは後日。

ついでに言うと

J-CASTに格闘技業界のニュースが無いのはさびしいな。
だれか協力してやったらどうだ(笑)。