独立派メールマガジン「台湾の声」は、ものすごく膨大、頻繁にマガジンを発行するので、フォルダを別にして時々除いている。最近見てみたら、一週間ほど前から面白いやり取りがあった。
長文に渡るので申し訳ないが・・・
本日(11月27日)の朝刊13面「20世紀のきょう」欄で「カイロ宣
言」とあり「この日、日本に対して無条件降伏を要求するなどの方針をきめ
た文書に署名した。」と説明があります。1.御社が確認を取られているならば、その署名つき文書の写真を見せてい
ただけませんか?なぜこのように疑問視するかといえば、署名つきの同文書の映像がどこにも
出ていないからです(署名のないタイプ原稿は映像があり、国会図書館もこ
れを出しています)。また、台湾の沈建徳氏の研究や、政府への文書公開請求に対し、中華民国政
府も、米国政府もこれを提示できないでいます。そのような公文書は存在し
ないことを示しています。日本でもインターネット上で、同文書への疑問が多数提起されているのをご
存知ありませんか?2.また、文中、「日本に対して無条件降伏を要求するなどの方針」とあり
ますが、これは誤りです。無署名の原稿では「右ノ目的ヲ以テ右三同盟國ハ
同盟諸國中日本國ト交戰中ナル諸國ト協調シ日本國ノ無條件降伏ヲ齎スニ必
要ナル重大且長期ノ行動ヲ續行スヘシ」とされています(英文を末尾に貼り
付けます)。正しくは「日本の無条件降伏を目指して行動を取るなどの方
針」と書くべきです。3.「同宣言」が有効であるとすれば、台湾に対する中国の軍事侵攻に米英
日が異を唱えにくくなります。また貴紙の記述では、わが国が無条件降伏を
要求され、それを(ポツダム宣言を通じて間接的に)受け入れた、というこ
とになり、国家が解体されかねなかったのを存続させてもらっていることに
なります。貴紙が自虐史観の宣伝をするとしたら残念です。署名の有無およびその内容について、貴紙は事実を報道するのですか?それ
とも中国の宣伝にお墨付きを与えるのですか?4.以上の理由から「この日、日本に対して無条件降伏を要求するなどの方
針をきめた文書に署名した。」とする貴紙の報道について、訂正報道を求め
ます。11月27日
台湾の声編集部
産経新聞(11月27日付)は「20世紀のきょう」の欄で、昭和18年11月27
日の「カイロ宣言」を取り上げ、「第二次大戦連合国側のルーズベルト大統領、
チャーチル首相、蒋介石主席の米英中首脳がカイロで会談。この日、日本に対し
て無条件降伏を要求するなどの方針を決めた文書に署名した」と解説しているが、
ここには大きな間違いがある。この「文書」が所謂「カイロ宣言」だが、実際に
は三国首脳による署名は行われていないのである。実は「署名された」との説明は今回の記事だけに限らず、多くの日本の書籍も行
ってきたもので、「カイロ宣言」の説明文における決まり文句のようになってい
る。ではなぜそのような歴史誤認が定着してしまったのだろうか。これには「中
国捏造宣伝」説がある。戦後60余年経つ今日なお、さかんに「カイロ宣言」を持ち出す国と言えば、そ
れは中国だ。「カイロ宣言」の文中には「日本は満洲、台湾、澎湖列島などを含
む中国から盗取したすべての地域を中国に返還しなければならない」とあり、中
国はこれを台湾領有権の法的根拠としているからだ。終戦時の中国政権である蒋介石の国府は「カイロ宣言」を根拠に、台湾における
日本軍の降服受け入れのついでに、台湾の領土組み入れを勝手に宣言し、今日な
おこの島は、中華民国の国名を名乗っている。一方その後樹立された中共政権も
やはり「カイロ宣言」を持ち出し、国共内戦で消滅した中華民国の継承国として、
台湾の領有権を国際社会に向けて喧伝しているのだ。「カイロ宣言に基づき、日
本は台湾を中国に返還した」と言うのがこれら中国人の主張である。実際日本でも、こうした「台湾返還」説は常識になっており、学校の教科書にも
そう書かれている。だがそれはすべて中国人の歴史改竄、法理捏造を受け入れた
ものに過ぎない。なぜなら「カイロ宣言」は、日本による中国への領土(台湾)
割譲の条約などではなかったからである。日本が正式に台湾と言う領土を処分し
たのは昭和26年に調印のサンフランシスコ媾和条約によってであり、そこで日
本は台湾に関する主権は放棄したものの、その新たな帰属先については、何の取
り決めも行われなかったのである。それは国府自身も、翌年調印した日華平和条
約で追認していることだ。しかしこの法的事実を否定しない限り、国府は台湾を統治できなくなるし、中共
も台湾を占領できなくなる。そこで「カイロ宣言」こそ、台湾の戦後の帰属先を
決定した条約だと主張しなければならなくなった。だからこそそれを正式に署名
された条約だと強調するのである。だが「カイロ宣言」は、名こそ「宣言」と呼び、あたかも条約のような印象が持
たれるが、実際には公表されたその文書には「声明」の二文字しか書かれておら
ず、言わば名無しの文書である。それだけ見ても、これが決して条約などではな
かったことがわかるだろう。要するにそれは単なる三首脳の会談内容(対日戦略
目標)を示すプレスリリースにしか過ぎなかったのだ(この「声明」が何ら法的
効果を持たないことは、チャーチル自身が後年認めている)。だからもちろん、
三首脳の署名もそこにはなかった。台湾の学者、沈建徳氏が数年前、アメリカ、
イギリス、中華民国(台湾)の三国政府に、「カイロ宣言」なるものの署名入り
原本の在り処を問い合わせたところ、署名はおろか、原本自体が存在していない
ことまで判明していた。米英政府がこの「声明」に法的効果を認め、「台湾返還」が合法的に行われたと
認めていたなら、サンフランシスコ媾和条約で、わざわざ日本に対し、すでに主
権を失っている台湾を放棄させるようなことをさせるはずがない。このような経緯があるから、上述の「中国捏造宣伝」説が浮上するわけだ。
「カイロ宣言」は当事国によって調印(署名)すらされていない代物であること
は、「台湾は中国の一部」であるとする中国の主張を根底から覆すものであり、
この事実は国際社会でも広く認識されなければならないだろう。産経新聞には、誤った歴史記述を行った以上は、ぜひとも訂正記事を書いてほし
い。そしてこれを機会に、中国人の宣伝によってもたらされた「常識」を打ち破
ってもらいたいのだ。(18.11.27)
公開質問状に対し、産経新聞から以下のような「回答」があった。
このような「回答」は断じて許容できるものではない。
本誌編集部では再度質問を行った。再質問の内容を合わせて掲載する。=============================
産経新聞社からの「回答」11月27日付産経新聞朝刊の特集面に掲載された「20世紀のきょう」
欄の「カイロ宣言」に関する記事についてお尋ねがありましたが、回答は以
下の通りです。当該記事につきましては、国立国会図書館のホームページにある記述を参
考に致しました。ちなみに、カイロ宣言についての記述は、「対日方針を協
議するため1943年(昭和18年)11月22日からエジプトのカイロで
開催された米英中首脳会談を受けて、同月27日、フランクリン・ルーズベ
ルト米大統領、ウインストン・チャーチル英首相、蒋介石中国国民政府主席
が署名し、12月1日に発表された。(中略)カイロ宣言の対日方針は、そ
の後連合国の基本方針となり、ポツダム宣言に継承された」とあります。記事の目的は「カイロ宣言」の発出日を簡単に紹介することにありました。
加えて、宣言の原文にも日本国の無条件降伏を目指す旨がうたわれており、
記事の訂正には応じかねます。「カイロ宣言」の署名をめぐっては様々な議論があることは存じておりま
すし、弊社としても注意深くフォローしていくつもりです。ご理解いただけ
れば幸いです。平成18年11月29日
産経新聞社総合企画室
広報部長 高山 克介産経新聞社読者サービス室
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以下は、本誌の再質問。産経新聞社総合企画室
高山 克介 広報部長ご指摘のホームページを見たところ、
1.これは「宣言」原本の写真ではありません。
2.この文書は、communiqueと言及され、statementと題されており、宣言
(proclamation)ではありません。「声明」と訳すべきであり、「宣言」
というのは誤訳だと思われますが、貴紙で「宣言」として報じたのは、何
か他に根拠があるのでしょうか?3.報道発表に関する指示である同文書には署名どころか「署名がなされ
た」という記述すらありません。「以下の一般的声明が発せられた」としか
書いてありません。“President Roosevelt, Generalissimo Chiang Kai-shek and Prime
Minister Mr. Churchill, together with their respective military and
diplomatic advisers, have completed a conference in North Africa.
The following general statement was issued:”
“「ローズヴェルト」大統領、蒋介石大元帥及「チァーチル」総理大臣ハ各
自ノ軍事顧問及外交顧問ト共ニ北「アフリカ」ニ於テ会議ヲ終了シタリ左ノ
一般的声明発セラレタリ”4.ご回答では「日本国の無条件降伏を目指す」ことが写真に示された米政
府文書に書かれているとありますが、記事では「日本に対して無条件降伏を
要求するなどの方針」と書き換えていますね。「原文」のどこに「要求す
る」と書いてありますか?ご回答にあったように「日本の無条件降伏を目指
すなどの方針」とすべきだったのではありませんか?ご回答で文言を変えて
いることは、記事の記述が間違っていることを態度で認めていることにほか
なりません。5.お返事では、「国会図書館の記述を参考にした」とありますが、貴紙は
立法府関連のホームページに載っていたからといって、原本の映像がなく
(上記第一点)、同文書で引用されているのが宣言ではなく声明である(上
記第二点)という不審点を無視し、上記第三点に関して裏も取らずに、当方
が上記第四点で示したように、根拠なく歪曲ないし改竄して掲載したという
ことが、お返事を通じてよく分かりました。6.当方の問題提起に対して何ら有効な反論を行えなかったにも拘わらず
「記事の訂正には応じかねます」とのご回答は到底受け入れられるものでは
ありません。7.貴紙は、ちゃんと裏を取って報道し、読者から疑問の声があったときに
真摯に真実を追究し、誤りは誤りと認める責任ある自立したメディアですか?
今回の回答からは、あたかも小役人が他の機関に責任転嫁し、自らの責任か
ら逃れようとしているようにしか感じられません。8.再度、検証を行い、紙面、および貴社ホームページに掲載された当該記
事の訂正を行うよう、強く求めます。台湾の声編集部
どれだけの人が興味を持つかは分からないが、歴史が今に通じてくるとはこういうことなのだな、と感じた。