11.18の朝日新聞は3面「時々刻々」に、大変面白い記事が登場した。
フランス社会党は大統領職奪回の切り札として、人気者の女性政治家ロワイヤルが登場した。
ここで右派サルコジ(?になるかはまだ不透明)との「バトル・ロワイヤル」になるか、もしくは大博打の「カジノ・ロワイヤル」になるかは不明・・・とつい駄洒落がでてしまうが(笑)、んなことより、このロワイヤルさんは「不良は軍隊式学校で鍛えなおせ」など、社会党の中では比較的、右派なんだそうだ。
ま、それはそれ。この記事はそれをマクラに、全ヨーロッパで、「新しい右翼」が登場しているということを書いている。
その主張が面白い。
◆旧来の右翼は同性愛を蔑視する意識が強かったが、デンマークの右翼国民党から昨年の総選挙で初当選したルイセ・フラベルト議員は自らも同性愛者だ。5年前、同じ女性の医師と結婚した。イスラム教徒移民排斥を主張する右翼政党に加わったのは、自分のような自由な考えを移民たちが理解しないからだという。
「個人の自由を踏みにじる考えに同意できない。同性愛や表現の自由を認めない人々との対話は不可能だ」
(略)
国民党は、結婚観が異なるイスラム教徒との対話を強調する戦略をとった。高齢者ら弱者を支える政策を打ち出し、左派支持層さえ引きつけている。隣国ノルウェーでも事情は似ている。右翼の進歩等は昨年総選挙で、第2党に躍進した。今年、党首に就任した女性のシブ・ヤンセンさんは「ノルウェーは開放的で自由、寛容、男女平等の社会だ。だからこそ価値観がまったく違う移民を受け入れられない」
小生が最近読んだのは、比較ファシズム学(あんのかそんなジャンル)では第一人者の山口定氏が、複数の人と共著で発表した
- 作者: 高橋秀寿,村松恵二,上西秀明,畑山敏夫,堀林巧,山口定,高橋進
- 出版社/メーカー: 朝日新聞社
- 発売日: 1998/02
- メディア: 単行本
- クリック: 1回
- この商品を含むブログ (4件) を見る
だが、出版年がかなり古いのかな?このへんの潮流はほとんど触れられていない。まだ、ハイダー(墺)、ルペン(仏)、ボッシュ(イタリア北部同盟)といったところだ。
この新潮流は、きちんと抑えていないと駄目だろうね。
さて、彼らの言い分というのは・・・・うーん。
たとえばここで補助線として、アメリカの「キリスト教右派」を持ってこよう。
よく考えれば、ヨーロッパでこれほどキリスト教に基づく反同性愛や反中絶の勢いが衰え、メーンストリームに入れない状態が続いているというのは驚くべきことだ。アメリカが異様なのか、やはりメイフラワー以来の国の成り立ちの違いか。
とりあえず、ヨーロッパの新右翼(というか「新・新右翼」とよぶべきか)とアメリカの保守派の同盟関係はなさそうだ(笑)。
ただ、アメリカで中絶やES細胞研究、そして同性愛を嫌悪するキリスト教右派が違う世界のジャーナリズムの中で「悪役」的扱いをされるなら、今度、このデンマーク議員のように保守的なイスラム教の思想を「不寛容、同性愛差別、表現の自由の敵・・・」うんぬんという形で攻撃し、イスラムの側が悪役になっていく可能性も十分ありえる。
「ムハンマド漫画事件」という石を投げ込んでおきたデンマークの波紋は、まださざ波のように欧州の水面を揺らしているということか。