1、2年前に評判を呼んだ
- 作者: 長谷邦夫
- 出版社/メーカー: 清流出版
- 発売日: 2004/05/09
- メディア: 単行本
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を読みました。長谷さんは住人ではないが、トキワ荘のみんなとは深い関係が当初からあり、有名なエピソードの語り部でもある。
ただ、メインの部分は偉大なギャグ作家だった赤塚不二夫(長谷氏はギャグブレーンだった)が、漫画の枠組み飛び越えて芸能界に人脈を広げ、どんどん新しいことに挑戦していくうちに、逆にその世界の魔力に絡め取られて酒とパーティーで才能と情熱を磨耗させていく・・・・・・・という、悲しい物語だ。
以前から、「編集王」のマンボ好塚のモデルは、梶原一騎と赤塚不二夫だといわれていたが、それを裏付けるものといえるだろう。
さて、この作品の中に、「タモリ」が在住の福岡から上京、芸能界デビューのきっかけをつかむ話が出てくる。
「初期タモリ」のアナーキーさ、ブラックぶりはわれわれは追体験するほかない。村松友規「ダーティ・ヒロイズム宣言」でも、インテリ好事家というか今で言えば「トンガっている」人たちに口コミでタモリの噂が広まっていくさまが描写されているが、これはそのまえ、本当に最初に、ただのセールスマンが脚光を最初に浴びる瞬間の話だ。
実は相当有名なエピソードで、さいとうたかをが漫画化した「小説吉田学校」でも、昭和史の重要なトピックとして漫画で登場している(笑)。
検索して、ひとつ例を挙げてみましょう。
http://www.clio.ne.jp/home/kita/0303.html
山下洋輔トリオ (山下洋輔、中村誠一、森山威男)によって博多のビジネスホテルで偶然発見された タモリ は(山下トリオの面々がコンサートの打ち上げで3人で盛り上がっていると、突然、見ず知らずの男が クズかご を頭から被って、虚無僧みたいに「ほうき」を尺八がわりに吹きながら勝手に部屋に乱入してきたんですって。それが当時まだ素人のタモリでした。)その後上京して 赤塚不二夫 のマンションに居候します。そして夜な夜な新宿のとある飲み屋 「ジャックの豆の木」 で筒井康隆、奥達成ほか多数を前に 密室芸 を披露していた頃、同じく漫画家の 高信太郎 に連れられてTBSのラジオスタジオに登場し、タモリは初めて公共の電波を使って 「4カ国語麻雀」 や、変な外人牧師の説教の芸を聴かせてくれたのでした。
これはたぶん、景山民夫が東京12チャンネルで 「モンティパイソン日本語版」 をプロデュースした際、その番組内でテレビに初めてタモリを登場させたのですが(1976年春)それよりももっと以前の話だったと記憶しています。
これをこの本では「当時、中村誠一から直接聞いた話」として書いているから臨場感は抜群。そして、タモリを上にあるように「赤塚不二夫の家に居候」させるきっかけをつくったのも長谷氏だ。紹介したいのは山々だが、何しろ5ページにわたる描写なので・・・
スキャナーの無い自分(俺にスキャナーがあったら、そりゃあいろんないい資料を紹介しまくりで、凄いことになるYO)は、これが限界だな。これも有名な「タモリ牧師」。
ワタクシ、今日ココニー神ノ御使トシテ参リマシター、ジョージ・タモリデ御座イマス。
神ノー御言葉ヲコレカラ、ミナサンニ〜オ伝エイタシマス。
神ハー申サレマシタ。アカシヤノ雨ニ打タレテ〜死ンデシマイタイ〜ト!ソレハ、ア〜ナタガ〜タガ毎晩、悪魔ノ水ト悪魔ノ煙ヲ好ミ、ア〜マツサエ〜、スルメヲ焼キ殺シー、何ノ反省モ無イ毎日ヲ、オクッテイルカラデース。
マタイ伝183章デハ、マルコガ申シマ〜ス。
瀬戸ノ花嫁ハ〜格子戸ヲクグリ抜ケ、見上ゲル夕焼ケーノ中デ祝福サレマ〜ス。
221P
すばらしいね。
どこかで、自分も一回だけ映像を観た記憶がある。
今、これに接しようと思えば接することができるのだろうか。
これがいわゆる「6か国会議]・・・もとえ「4カ国麻雀」か。
http://dad.cside.com/tamori.mp3
筒井康隆「腹立半分日記」では昭和天皇のモノマネをするタモリに関する記述もあったな。
- 作者: 筒井康隆
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 1991/05/10
- メディア: 文庫
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このほかにも、赤塚不二夫が同時代で関わった人間は相当な有名人があり、影響力もすごかった。
そういえば、今50代のフツーの人が「冬に冷やし中華を食べる会」の面白さについて熱く語ってくれたことがあった。その頃の自分はこれを知らなかったから驚いたものだ。
あとひとつ、長谷邦夫氏が「SF大会」に出る場面と、
赤塚不二夫のプロダクションが赤塚の派手な活動もあって金銭的に苦しくなり、「原発啓蒙漫画」を手がける際のアレコレが面白かった。
SF大会の話はいずれ紹介したいが、ひとつメモ代わり。
たぶん時事ネタ満載なために文庫本とかの形にはならなかったのだろうけど、読んでみたいもんだ