INVISIBLE Dojo. ーQUIET & COLORFUL PLACE-

John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

改題・プロレスで「仕掛ける」「受けて立つ」ということ〜キャッチと前田と鈴木みのるとバダ・ハリと

またコメントをもらった。貴重なので再びエントリーに加工する。そしてそこからつなげる。

ひねリン 『>(註;「カンバーランド・ウエストモーランドスタイルの一流選手が差し合いの状態になったら、一瞬で相手をひっくり返す」というのは)すごいが具体的にはどうやって?


ttp://www.bbc.co.uk/nationonfilm/topics/other-sports/
のfilm clip list の一番上のレスリングクリップの、最後に出てくる「くるくる投げ」みたいなやつじゃないでしょうか? ちょうどロビンソンが十代の頃の映像だし。カンバーランド&ウエストモーランドレスリングは、新組織(当然それ以前から伝統があるわけですが)が生まれて今年で百周年ということもあり、BBCのサイトをみるといっぱい大会の記事があります。』 (2006/10/05 09:03)


# gryphon 『そういえば読み、書き写しときながらあっさりスルーしてしまっていたが、「カンバーランド&ウエストモーランドレスリング」というのは初耳だったんだよな。』 (2006/10/05 09:06)


# ひねリン 『イギリスの映像と言えば、「CATCH the hold not taken」というイギリスで作られた映像(内容はキャッチだけの歴史というより、アマレス、プロレスごたまぜ。「日本でランカシャースタイルを伝える人」として藤波さんまでインタビューされてる)をこないだ見たら、スネークピットの昔のレスラーがアメリカだかカナダだか行くことになった時に「試合で裏切られることがあればこれを使え」と例のグロヴィット(フェースロック)を教えられた思い出を語ってました。
で、ある人がこの映像をカール・ゴッチに見せたら、ゴッチは「なかなかよく出来てるが、イギリスのことばかりでアメリカのキャッチレスラーについてほとんど触れてないのがけしからん。アメリカのキャッチ・アズ・キャッチ・キャンの方がイギリスより断然強い選手を多く擁していたのだ」等と語ったそう。』 (2006/10/05 09:13)


# ひねリン 『カンバーランド・・・(C&W)スタイルは、(上記urlのクリップからも察せられますが)お互い組み合って背中でグリップを組んでアゴを肩に乗せ合ったとこから開始し投げ合う、イングランドの上の方の高地(と思う)で行われてた伝統レスリングみたいです。

ある論文によると1800年代初には12000人、1900年代初には16000人の観客を集めたこともあるとか(いつも繁栄してたわけでなく、低迷期も何度も経験)。いつからか選手がセミプロ化して、はびこる八百長(barneying)とそれを制御しようとする組織の争いがいろいろあったみたいだけど、古い文献によると1713年に書かれたルールにすでに「選手はいかなる条件においても相手に勝ちを譲ってはならない」という条項があったそう。

現在行われているC&Wは当然、「カンブリア州の地域伝統の保全」(あるいは再発明)みたいな意味合いが大きいと思うんだけど、さすがに彼らもそれが日本で「プロレス神話の逆襲」(というネタ)として持ち出されてるとは想像してないでしょうね。

さて、世界的なレスリングの流れや「シュートとワークはどう始まり、どこで発展していったか?」など興味深い話題は尽きないのだが、この文字を大きくした場所を中心に今回論じてみたい。
ジョシュがノゲイラを大いに焦らせた、フロントチョークのような体勢からちょっと首をひねってのあの技は、蛇の穴の選手が「試合で相手が裏切ってきた」時につかう技だったというというのだ!!!ベベベンベンベン。
心の梶原一騎よ、目覚めなさい。


さて、プロレスとは、ミスター高橋が言うような意味で「プロレス」である。真剣勝負ではない。
しかし、どこかで相手が「裏切る」かもしれないという不信を相互が持ち、そのときにはてめぇ、こうするぞ、と反撃の技を身に着けて・・・・ライガーの言うところの「ナイフを隠し持って」やっているはずだ。


少なくとも、かくあるべしという理想はあった。

前田日明がBMLに協力を始めたとき「本物のプロレスの復興」と所信を述べ、え?やりたいのは格闘技じゃないのかと一部のファンを落胆させたが、彼がこういうものを理想としたのならば合点がいくだろう。


さて、その前田日明と因縁浅からぬ鈴木みのるだが、こちらは今の全日ではあるが、やはり伝統に輝く三冠王座を獲得し、ひとつの頂点をきわめたといってもいいだろう。正直、プロレス界でここまで名を挙げるというのは私の全く予測しないところであった。強く賞賛したい。

その中で、彼もひとつの区切りと考えたのだろうか。週刊プロレスの出した「プロレスってなんだ?」
で、俺流プロレス論を展開しているのだが、その中で、こういう趣旨のことを語っている。


「自分はSWSのアポロ菅原戦で、アポロがいきなり親指をつかんで曲げてきて、脱臼させられてしまった(試合中に自分で戻したという)。セコンドは『仕掛けてきてる、やれ!』と言ったけど、いざ実際に相手の骨を折るというのはかなり精神的な覚悟が要る。結局やられもしなかったけど、仕掛けることも出来なかった。ゴッチさんからは『なんで完勝できないんだ!あんな弱い相手に』と試合後怒られた」(大意)


さて。
この内容については断片的に語られているので目新しい話では無いといえば無いし、映像も残っている。(なんとあれだけ有名な”裏映像”なのに、自分は通してみたことが無いのだ。前田vsアンドレも)ただ、鈴木自身が「仕掛けられなかった」と今、認識しているのはそれなりに重要だと思う。


その他の部分で鈴木は上回っていたのかもしれないけれどさ、まあ、今となっては菅原のほうも、吉田豪インタビューあたりから「セメントでも俺は鈴木みのるに負けてなかったんだぜ」的な部分を打ち出すこともあるらしい。相手の指をいったん折って、自分は五体満足で帰ったのだからそういう考えもありだろう。

今となっては菅原の「武勇伝、デンデン!!」というやつである。
そして記憶に新しい、鈴木みのるvsソラール戦。
反則勝ちではあるが、金的攻撃でマットに倒れたのはみのるで、ソラールはコーナーに上って大アピールした。結局、このインタビューでは自分でも「そういう反則攻撃も含めて、やられたのは自分の責任だ」と認めている。

まあ、それを全面的に認めたら、不利なほうは金的や目潰しでとりあえず相手をやっちゃえ、という話になってしまいそれも大いに困るのだが、密教顕教で、脈々と地下水脈を流れている考えであることも事実だ。


そしてバダ・ハリ
まったく理不尽な話ではあるのだが、自分が散々「俺はバッドボーイ」「オランダのコンクリート・ジャングルで、用心棒兼経営者として体を張って稼いでる」というイメージを売っているから、肘?やダウン後の攻撃?を受けたといって猛抗議すると違和感を感じてしまうところなきにしもあらず。

なんなんだろうね。
バダ・ハリは再浮上できるのでしょうか、鈴木みのるのように。