「野中広務 差別と権力」「渡辺恒雄 メディアと権力」などで知られる魚住昭氏が、今週から「週刊現代」でメディア時評を始めた。
彼は、スクープ記者・ノンフィクション作家としては高く評価するが、時評家としてはかなりズレがある(プラス特定の色がある)と個人的には思っていて、どっちの面が出るかは逆にそれなりに興味深い。
だが、第一回「偽装建築事件」の書き方は、かなり意外なものであった。
というのは、例の偽装建築問題は最終的に「姉歯の単独犯行」ということになったでしょ?
で、それに対し、”反権力”もしくは”一言居士”の側は「そんなはずはない!もっと深く暗い闇が背後にはあるはずだ。自民党と小泉首相らの権力でうやむやにしたんだ」てな感じのことをついこの間まで言っていたような気がする。
さすがに大メディアはそこまで言えないが「以前、謎は残ったままです・・・」みたいなぼかし方をしていた1ところもあっ。
ところが魚住氏は、完全にこの「姉歯単独犯行」説を肯定する立場から「その構造を見抜けず、まるでヒューザーや木村総研までグルのような扱いをしていたメディアはけしからん(単独犯だといち早く打ち出したところは偉かった)」という立場から各紙を採点していたのだ。
これは意外でした。
「ヒューザーの幹部も姉歯設計のマンションを購入していた。こういうことを最初から報道していれば違っただろう」と魚住氏は言っている。
2日前、姉歯元建築士は国土交通省の聴聞会で、木村建設からの「圧力」で偽装をしたかのように説明した。がけから飛び降りたとみられる代表は、こう書き残した。
《姉歯の偽造はまったく知りませんでした/木村建設も同じだと思います/知っていて隠すばかがどこにいますか/世の中が(自分を)姉歯の仲間と思っていることに耐えられなくなりました》
この遺書が実は事件の全体像を示していた。
(略)
警視庁の事情聴取にもよどみなく答えていた姉歯元建築士だが、つじつまが合わなくなると「記憶にない」と口にした。
「あいつはうそつきだ」。捜査幹部たちは確信を深めていった。
いま、姉歯元建築士は「自分で偽装を始めたと言う勇気がなかった」などと供述している。親しい女性との交際に金を必要としていたことも捜査本部の調べで分かった。