これはだれの言だったかな(『クーデターの政治学』という本を書いた岡崎久彦だったかもしれない)、戦後タイというのは広ーくいいますと「強権軍事クーデター党」と「腐敗政党政治党」の”二大政党”だったと(笑)。
比較的、軍がクーデターを行った後の民政移管がスムーズで、様式化されている部分があり、またなんというか街の空気が「政党の汚職がひどすぎる」「軍が横暴にすぎる」という具合にほどよく熟成したときに、この政変がおこるんだとか。
これは当然、アジア史に名を残す英明の君主、プミポン国王という安定装置があることも大きいが。
で、上のような軍と民政のスイングによる政権交代なども極端に「民主的ではない」と一面的な断罪をすることはしにくい。民主主義が蛇行的に、一進一退で進むとしたら、この変形の”二大政党”もやむを得ない部分があろうし、ひとつの勢力がずっと政権を握るよりはましかもしれない。
ただし、やはり70年代、80年代に行われたならともかく、21世紀に、しかも経済と情報がグローバル化した時にクーデターが引き起こす対外威信の低下は今までより何倍も大きい。
アジアにおいて、当のタイを含めてさまざまな地域で民主主義は曲りなりに発展、定着してきたし、実際のところ絶対数も減っている。東南アジアのリーダーはこの騒動で、面子を失っている。今回のクーデターが、願わくば最後のクーデターにならんことを。
- 作者: 岡崎久彦,横田順子,藤井昭彦
- 出版社/メーカー: 中央公論社
- 発売日: 1993/09
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選挙でない「政権交代」について
さっきの軍事クーデター党と民政政党党の政権交代という話だけど、これをさらに広く言うと、さまざまな途上国では「独裁不自由秩序党」と「無政府自由大混乱党」の間の政権交代があるように見受けられる。
アフガニスタンの、共産党崩壊⇒内戦⇒タリバーン登場もそうだし、フセイン政権崩壊後のイラクで内戦が収まらないのもそれに近いかもしれない。
近いところではソマリアを支配しつつあるのが、やはりタリバン的にイスラムに基づいた厳格・厳罰の施行で秩序を回復させつつある「イスラム法廷」という勢力だという。
http://www.cnn.co.jp/world/CNN200608250032.html
女性にむち打ち刑執行、イスラム勢力制圧のソマリア首都
2006.08.25 Web posted at: 20:22 JST- CNN/APモガディシオ――軍閥などが乱立し、無政府状態と内戦が長く続いているアフリカ東部のソマリアで勢力を拡大しているイスラム武装勢力「イスラム法廷連合(ICU)」は24日、首都モガディシオで、麻薬を売っていた罪で女性に計11回の「むち打ち刑」を執行した。
ICUは厳格な「イスラム法」解釈の統治を進めているが、同処罰の実施は、今年6月にモガディシオを制圧して以降、初めて。
ICUは他地域にも勢力を伸ばしている。映画なとテレビの娯楽番組の放映を禁じ、今年6月─7月にもサッカーのW杯試合のテレビ観戦も禁止していた。AP通信によると、22日にはモガディシオでインド映画上映の会場をイスラム組織の戦闘員が摘発、観客を殴打するなどしたという・・・・
http://finalvent.cocolog-nifty.com/fareastblog/2006/06/post_ba91.html
極東ブログ 2006.06.20「ソマリア南部情勢」
これも、どっちがいい悪いというのは一概に言えないが、ただ、どっちか一方でその地が続くよりはいいことなのだろう。それは人間の集団が持つ自浄作用なのかもしれない。
政党の名前について
個人的に、前述の「イスラム法廷」のような各国の政党・政治組織の名前って面白い。なるほど、こういうことがあちらでは重視されているのか、これがいいイメージなのか、とか。そういう点では政治組織を現地語そのままで言うのはやめて、ちょっと意訳でも日本語にしてほしい。
「制度的革命党」「国民行動党」「民主主義改革党」以上メキシコ
「開かれたウリ党」「千年民主党」(韓国)
「穏健党」(スウェーデン)ほかにもいろいろあったなあ。
おもしろかったのに結局映画評を書かなかった(縁があればいつか書くかも)ロード・オブ・ウォーでは、リベリアだったか?ただの盗賊ダンとあまり代わらない軍閥たちが「民主主義ナントカ戦線」とか「自由カントカ連合」などと称していることを皮肉っていたな。