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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

「ホテル・ルワンダ」雑感

◆初日の初回から長蛇の列。立ち見を加えても120人しか入れないが、行列はそれ以上に長く、出足は好調。今後も座って見るためには最初に整理券をもらい、次の回を見るような形がしばらく続くだろう。


◆内容は、この前のエントリで予想したようなブラック・ユーモア性はかなり少なく、きわめて正攻法、まじめに作っている。このへんの黒い嗤いはむしろ「ロード・オブ・ウォー」のほうが全面的に打ち出していた。



◆かといって、虐殺をリアルに、ことさら猟奇的に描いたりはしない。
監督は「意図的に、そういうシーンは寓話風に撮影した」という。



◆アフリカの軍閥においてはナチス親衛隊の一糸乱れぬ統制された独裁性、残虐性ではなく、その無統制ぶりがかえって怖い。そのへんの描写がうまかった。結局、無統制といえばこのホテルの命運を握る政府軍の将軍は賄賂が大好きで、そのへんが突破口になるのだが。



◆国連軍の現地指揮官は制限と圧倒的少数という現実の中で奮闘はするが、どれだけ事実に基づいているか。国連軍も結構失敗したが故のルワンダ内戦ではあったが、このホテルの担当者レベルだと勇敢奮闘したのだろうか。



◆こういう場においては、かならず「選別」が行われる。
有力国の国民(というか外国人)は各当事国の国力を受け無事保護、脱出できる。
その国の国民は簡単に他国に亡命はできない。
どんな人物だって家族や親族を助けるのを優先したい。
そもそもホテルに入れる数だって限られる。

良心的な善人ほど、その選別は悩むし、結果にも良心の呵責が出る。ましてや「どっちかを殺せばどっちかは助ける。それをお前が選べ」といわれた日は?
これはオスカー・シンドラー杉原千畝だって感じたに違いない。


ちなみに、逆に暴発するように「救民」を掲げ勝算なき叛乱を起こするという過激行動に走った大塩平八郎に関し、この事件を「知識人の叛乱」と喝破したある研究家は、彼らの行動を駆りたたせたものは「世界に対する無限責任」だったと語っている。


われわれは世界に対し無限責任は負えない。
で、あるなら、それでもなお、如何にあるべきか。前提になる知識や威厳の有無はともかく、鑑賞者もほんの少しばかりは「自分がこの主人公だったら如何に振舞っただろうか」とは考えたい。