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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

青空文庫の運命(毎日新聞「発信箱」)

http://www.mainichi-msn.co.jp/eye/hassinbako/
全文は申し訳ないが、長く保存したいので。

青空文庫と70年問題 冠木雅夫(学芸部)
 便利な時代である。例えば1933年の米国映画「キング・コング」が当時の日本の文学作品にどう現れたかを知りたければ、すぐにこんな事例に出合うことができる。

 無頼派織田作之助の「青春の逆説」には<「キングコング」のような荒唐無稽(こうとうむけい)な映画だけを褒めた>という記者が登場する。プロレタリア作家、宮本百合子が夫の宮本顕治氏にあてた「獄中への手紙」には、同志の作家、佐多稲子の息子が<キングコングをして遊んだ>という記述がある。プロレタリア詩人、小熊秀雄の「愛の一刀両断」には<キングコングのやうに敵に刃向かふ>という一節が出てくる、といった具合だ。

 ネット上の電子図書館青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)での検索の威力である。ファイル作成や校正などの膨大な作業をボランティアが担う同文庫は、漱石、鴎外など著作権の保護期間(没後50年)が切れた5000点以上の作品を無料公開している。新年には坂口安吾の怪作「風博士」なども加わった。先輩のプロジェクト・グーテンベルク(米国)はじめ、同種の試みは増え続けている。

 だが、青空文庫には心配事がある。著作権の保護期間がEUや米国並みに70年に延長されそうなのだ。そうなると先に挙げた作家は4人とも引っかかる。同文庫は昨年来、反対のアピールを出しており、利用者としては同感したい気持ちだ。だが、国際ルールという大義名分、著作権継承者や出版社の利害もあり、抗しきれないかもしれない。それにしても20年分の蓄積が使えなくなるのは惜しい。いい解決策はないものか。(学芸部)

毎日新聞 2006年1月10日 0時31分