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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

12/3、台湾県市長選(「台湾の声」より転載)

12/3 県市長選挙大分析【北台湾編】

                   台湾の声編集部

*政党略称:民=民主進歩党、国=中国国民党、親=親民党、台=台湾団結
連盟、新=新党、無=無所属その他(無党団結連盟を含む)

台北県 Tai-pak/Thoi-pet
1 黄福卿(無)
 2 周錫[王韋](国)
3 陳誠釣(無)
4 陳俊傑(無)
 5 羅文嘉(民)
6 黄茂全(無)
過去の県長選挙結果
85 89 93 97 01
国 民 民 民 民
2004年総統(大統領)選挙
陳水扁(民)46.9
連戦 (国)53.1
2004年立法委員(国会議員)選挙
一区:民35.9、国30.6、親20.2、台13.1、無 0.3
二区:民40.9、国36.6、親12.5、台 9.4、無 0.6
三区:国41.3、民30.6、親22.1、台 5.4、無 0.7

台北県は6人立候補しているが、実質的には民進党の羅文嘉と国民党の周
錫[王韋]の戦い。台北県は360万人もの人口を抱える台湾最大の県。1989年
以来、民進党の県政が続いている。しかしながら、支持者の基盤は民進党
国民党ほぼ互角で、2004年の総統選挙では国民党のほうが民進党の得票を上
回った。

民進党の支持基盤が強いのは三重、蘆州、新荘、樹林など淡水河西部の都
市部で、また、石碇、坪林、貢寮など県東南部の山地も強い。国民党の支持
基盤が強いのは外省人比率の高い永和、新店、中和など新店渓周辺地区。県
庁所在地のある板橋市はほぼ互角の争いとなっている。

民進党の羅文嘉は、客家委員会主委も勤めた客家人で、民進党の中では若
い世代に属し、若者からの支持も厚い。ホーロー系の民進党に加え、これま
で国民党に流れていた客家票の開拓もめざす。台北県内の客家人は分散して
いるので目立たないが、新荘、三峡、永和などが比較的多いほか県内で約10
%を占め、この票の行方が県長選挙のカギを握る。

国民党の周錫[王韋]はもともと親民党の立法委員だったが今年、陳水扁
統と宋楚瑜親民党主席が会談し、民親合作をしようとしたことに反発、国親
合併を主張して国民党に移籍した。そのため、親民党や一部国民党員からの
反発も招いたが、結局民進党に政権を取らせないという目標で一致し、親民
党は独自の候補を出さず周錫[王韋]を支持することを決定した。外省人であ
るため、板橋、土城、中和、永和、新店などの眷村(軍系アパートなどの外
省人村)からの信頼は厚い。

両候補とも台北捷運環状線(新店大坪林〜新荘五股工業区)の建設に賛成
し、台北市から放射状に伸びる地下鉄と連絡して台北県の交通事情を改善さ
せる点では一致している。

台北市台北県では現在、台北県のほうが中央からの予算が不利な状態に
あり、周氏は台北県と台北市の合併を主張し、「県市聯手」をスローガンと
している。一方、羅氏は合併したかといって台北県に予算が多く流れるとは
限らず、台北市に県が消滅されることは県の発展に不利だとして反対してい
る。

台北県は2008年の総統選挙の拠点として、台北県を制した党が総統選挙を
制するとも言われており、今回は与野党最も力を入れている県である。国民
党は政府の官員が関わっていた汚職事件を追及、民進党の支持率は一時低迷
したが、周氏が債務を不当に踏み倒していた「永洲案」が発覚、支持率は再
び並んでいる。

基隆市 Ke-lang
 1 陳建銘(台)
現2 許財利(国)
 3 劉文雄(親)
過去の市長選挙結果
85 89 93 97 01
国 国 国 民 国
2004年総統(大統領)選挙
陳水扁(民)40.6
連戦 (国)59.4
2004年立法委員(国会議員)選挙
親35.7、国29.0、民22.7、台14.2、無 4.2

基隆市は国民党と親民党が整合できず、現職の国民党・許財利に対して、
親民党・劉文雄、台連の陳建銘が挑戦する。もともと、民進党から王拓が参
選の意志を示していたが、他県で台連の協力を取り付けるため、王拓は辞退
し、台連の陳建銘支持に回った。

基隆市は軍港があるため国親両党の支持基盤が強く、親民党は2004年の立
法委員選挙では35.7%も得票している。このため親民党の劉文雄の当選の可
能性も十分ある。現職の許財利は汚職事件の疑惑もあり、陳建銘と劉文雄が
それぞれ許財利を攻撃するという構図になっている。

台連の陳建銘は民進党との合作に成功したものの、民進党支持者の票がど
れだけ吸収できるかが課題。民進党票が確実に台連に流れ、国民党と親民党
が真っ二つに割れた場合は、当選できる可能性は高い。

基隆では市内に路面電車を進化させたライトレール(軽軌)の建設計画が
あり、各党建設を約束している。また、基隆は台北への通勤事情が悪く、鉄
道の増発なども課題になっている。


宜蘭県 Gi-lan
 1 陳定南(民)
 2 謝李靜宜(無)
 3 呂國華(国)
過去の県長選挙結果
85 89 93 97 01
無 民 民 民 民
2004年総統(大統領)選挙
陳水扁(民)57.7
連戦 (国)42.3
2004年立法委員(国会議員)選挙
民53.6、国28.5、親18.0

宜蘭県は3人出馬しているが、実質上は民進党の陳定南と国民党の呂国
華の争いとなっている。宜蘭県は民主の聖地と呼ばれており、国民党以外
の政党が認められなかった戒厳令時代から党外(国民党に属さない無党派
の県長が活躍し、民進党が結成されてからはずっと民進党の県政が続いて
いる。

民進党の陳定南は党外時代に宜蘭県長を務め、中央政府では法務部長
(大臣)も務めた。これまでの実績を武器にして再び県長選挙に臨む。し
かし、長く民進党執政が続いているため、そろそろ国民党にもやらせてみ
ようというムードもあり、民進党はやや伸び悩んでいる。選挙戦最後は、
民主の聖地として、中国派に政権をとらせてはならないという台湾意識を
凝縮させて、宜蘭県民進党の基盤を守ろうとしている。


桃園県 Tho-hng/Tho-yen
現1 朱立倫(国)
 2 鄭寶清(民)
3 呉家登(無)
過去の県長選挙結果
85 89 93 97 01
国 国 国 民 国
2004年総統(大統領)選挙
陳水扁(民)44.7
連戦 (国)55.3
2004年立法委員(国会議員)選挙
国40.0、民34.2、親13.6、台 6.7、無 5.6

現職の国民党・朱立倫民進党・鄭寶清が挑戦する。桃園県客家人
外省人の比率が高く、国民党の支持基盤が強い県。朱立倫桃園県内の眷
村で育った外省人。ただし、朱立倫外省人ではあるが、国民党と親民党
陳水扁総統銃撃事件は自作自演で選挙は無効と騒いでいたときにも、朱
氏はほとんど興味を示さずデモにもあまり参加していなかった。そのため、
台湾派からもウケが比較的よく、逆に民進党は伸び悩んでいる。

民進党の鄭寶清は朱市長が外省人の住む眷村の建て替えに予算を使い過
ぎていることや、台風ごとに起きた石門ダムの汚濁による断水を批判し、
鄭氏は台塩時代に得た技術で、治水問題を解決すると公約している。

選挙選終盤は朱氏のスキャンダルを暴露した「非常光蝶」(VCD)をめぐっ
て、取締まろうと警察を動かした朱県長に対して、民進党の鄭氏は言論の
自由の弾圧だとして猛反発している。

新竹市 Sin-tek/Sin-chuk
 1 鄭貴元(民)
現2 林政則(国)
過去の市長選挙結果
85 89 93 97 01
国 国 国 民 国
2004年総統(大統領)選挙
陳水扁(民)44.9
連戦 (国)55.1
2004年立法委員(国会議員)選挙
国27.3、民26.0、親21.4、台18.7、無 6.8

新竹市は現職の国民党・林政則に民進党の鄭貴元が挑戦する。新竹は空
軍基地があり外省人比率が高いことや、科学技術工業園区があり、中国と
も関係する企業が多いことから国民党の支持基盤が強い。また、新竹市
新竹県ほど客家人比率は高くないが、林氏は客家系であることから客家人
の支持も厚い。

民進党の鄭貴元は、新幹線開通後は新竹の玄関が新竹市から竹北市へと
移るのに、新竹市の都市交通建設が進んでいないと批判。新竹市内から竹
北を結ぶライトレールの早期建設を訴えている。
 この計画は以前からあったものの、現県政下では財政難で進んでいない。
また、内湾線を高架化して改良し、竹中から竹北の新幹線新竹駅まで延伸
させる計画もあるが、まだ具体化できていない。

しかし、選挙戦は林氏が現職の強みを生かしてリードしている。

新竹県 Sin-chuk/Sin-tek
 1 林光華(民)
現2 鄭永金(国)
過去の県長選挙結果
85 89 93 97 01
国 民 民 民 国
2004年総統(大統領)選挙
陳水扁(民)36.1
連戦 (国)64.1
2004年立法委員(国会議員)選挙
国42.7、民36.9、親20.4

新竹県は現職の国民党・鄭永金と元県長の民進党・林光華との争い。新
竹県は客家人比率が非常に高く、客家人うしの争いとなる。国民党内選
挙で公認を得られなかった立法委員の邱鏡淳が親民党に移籍し、県長選挙
の出馬の準備をしていたが、結局民進党に取らせないことで一致し、出馬
を断念し、国親合作に成功した。民進党の支持基盤は4割弱であるため、
伸び悩んでいる。

新竹県竹北市には新幹線の新竹駅ができ、駅周辺には大規模な都市計画
がされ、地価の上昇も続いている。この成果で現職の鄭氏が有利であるが、
林氏はこれは林氏の県長時代に造られた計画だと主張している。

苗栗県 Meu-lit/Biau-lek
 1 顏培元(無)
 2 陳秀龍(無)
 3 劉政鴻(国)
 4 邱炳坤(民)
 5 徐耀昌(無)
 6 江炳輝(無)
過去の県長選挙結果
85 89 93 97 01
国 国 無 無 無
2004年総統(大統領)選挙
陳水扁(民)39.3
連戦 (国)60.8
2004年立法委員(国会議員)選挙
国43.0、民33.6、親18.5、台 3.2、無 1.7

苗栗県は台湾最大の客家県として、ずっと客家人による県政が続き、
1993年以降は無所属の客家系地方実力者が県長を務めていた。今回引退する
傅学鵬県長は民進党の邱炳坤の支持を表明した。

苗栗県は海線地区はホーロー人比率が高く、山線地区は客家人比率が高い。
このため従来は、海線地区は民進党が強く、山線地区は国民党が強い状態が
続き、全体では山線の客家人ほうが多いので、国民党の基盤が強かった。

国民党は今回ホーロー人の劉政鴻を立て、海線からも票を固める作戦に出
た。逆に民進党客家人で国民党籍だった苗栗市長の邱炳坤を引き込み、国
民党基盤の切り崩し作戦に出た。さらに、客家の県長後継者を支援したい傅
学鵬県長の支持もとりつけた。これに危機感を抱いた親民党が客家人の立法
委員である徐耀昌を無所属で立て、三つどもえの戦いとなった。

世論調査では国民党の劉政鴻が有利と言われているが、客家人世論調査
で自分の本音を語らないと言われており、民進党の邱炳坤か、無所属の徐耀
昌かじっくり選んでいると見られている。最終的に棄保効果が起こり、勝て
そうな客家候補に票が集中する可能性もある。

また、国民党の劉氏は「農民銀行」案の汚職疑惑があり、農民からの信頼
が揺らいでいる。



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