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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

杉原千畝のドラマが11日放送。そして樋口季一郎

http://tv.yahoo.co.jp/bin/search?id=36607690&area=tokyo

「世界が涙した愛と感動のストーリー
大戦下のヨーロッパで6000人ものユダヤ人の命を救った日本人がいた!」

終戦60年ドラマSP日本のシンドラー杉原千畝物語・六千人の命のビザ

◇第2次大戦下のリトアニアで、外務省の命令に背いてユダヤ難民に日本の通過ビザを発給し、多くの人命を救った日本人外交官、杉原千畝の姿を実話を基に描く。杉原幸子原作、渡辺睦月脚本、渡辺孝好監督。外交官の杉原(反町隆史)は妻の幸子(飯島直子)ら家族とリトアニアに赴任した。
その直後、第2次大戦がぼっ発。ナチス・ドイツポーランドの西半分を制圧し、ユダヤ人への迫害を始めた。リトアニアソ連に併合されることになり、日本領事館に閉鎖命令が下される。そんな折、日本領事館にポーランドから逃れてきたユダヤ難民が押し寄せ、日本の通過ビザの発給を求めた。杉原は外務省にビザ発給の許可を請うが、許可は下りなかった。退去期限がひと月に迫った時、杉原は外務省の意向に背いてビザの発給を決意する。

放送日時 10月11日(火)21:00〜23:09 日本テレビ Gコード(935121)

ドラマを見ようと思うのは久しぶりであります。
そういえば杉原の行動が(大筋で)外務省の国策に沿ったものか、単独行為かてな論争があったようだが、だいたい単独行為で落ち着いたようだね。

ところで、もうかなり杉原千畝知名度は上がって、何しろこのように有名俳優・女優によってドラマ化されるまでになったのだけど(この功績は、関口宏の「知ってるつもり!」に帰するだろう。あの偽善司会者も、それなりには役に立つ)、その半面、「キャラが被る」ゆえか同じような功績を挙げた人の影がやや薄くなっている。


それが樋口季一郎、安江仙弘と「オトポール事件」であります。
昔はこの話を調べるにも苦労したものだが、ネット時代は便利なもので非常に手際よくまとまったサイトを検索であっさり発見。
http://www2s.biglobe.ne.jp/~nippon/jogbd_h11_1/jog085.html
http://www2s.biglobe.ne.jp/~nippon/jogbd_h11_1/jog086.html


http://www.myrtos.co.jp/index.html?url=http://www.myrtos.co.jp/magazine/200306/higuchi_kiichiro68.html



これは、杉原の事件の2年前。
こういう形でユダヤ人政策を是認したのなら、当然外務省と軍部が連携してりゃあいいのでが、そこが「人類ならぬ官類」の不思議なところで、このことを杉原は知らなかったらしい。


とまれ、この二人の軍人は、イスラエルで建国などに尽力したユダヤ人と外国人10人を記念したゴールデン・ブックに「ゼネラル・ヒグチ」「コロネル・ヤスエ」として名が刻まれているという。


さらにいうと、この人はその後北方守備に携わったそうで、アッツ島玉砕(この人の責任?)と、キスカ島撤退(これは奇跡の大成功といわれる)の責任者。

そして、今年8月「わしズム」で小林よしのりが「ゴー宣extra」で漫画化し、一躍有名になった「日本軍最後の戦い・占守島防衛戦」の責任者であったらしい・・・んだよな。
(漫画では現地の連隊長に焦点が当たっているので、樋口のことは出ていない)


これを読むとそれで間違いないようだ。
http://www9.wind.ne.jp/fujin/rekisi/seigi/seiginohito2.htm


このへんの詳細については、はてなの中でも山ほど詳しい人がいるはずなので、是非ともお尋ねしたいところだ。



疑問や今後の展望、トリビアいろいろ

【1】(上リンクより)「このキスカ島守備隊の撤退は映画化もされて・・・
へー、そんなのあるんだ。あとで探してみよう。


【2】「1992年生まれ故郷の岐阜県八百津町に杉原を顕彰する人道の丘公園が完成し、1994年には杉原の銅像が建てられました
これも行ってみたいが、八百津町ってどのへんやろか?新幹線駅から近いかな?


【3】http://www.aurens.or.jp/~taikanaku/syumusyutou%20no%20tatakai.htm
には樋口の北方防衛者としての資料一覧が載っているが
>②相良俊輔、『流氷の海』、光人社、1994年、780円
これ、おれ買っているはずだよ!読む前に本の山の中に入ってしまい、今では発掘困難だが。あとで探してみっか。
あれ、でも「はまぞう」では検索できない・・・・_| ̄|○


【4】なぜ、自分が樋口季一郎を知っていたかというとこの「流氷の海」を書いた相良俊輔氏が子供向けの「人類愛に生きた将軍」という本を書いていたからだ。

何度となく読み返した名作だが、これは天下のGoogleですら、実質10件たらずしかヒットしない。しかも当然のように絶版。1978年発行じゃしょうがないか。
版権とか個人的に買えないかな。それをCD-ROMとかで安く販売するとか・・・・まあそれぐらいなら、復刊ドットコムとかのほうが現実味があるか。


【5】この「人類愛に生きた将軍」では、実は東條英機が「儲け役」で登場する。
ドイツから圧力(というか正式な抗議)を受けた樋口が「これは間違っていないはずだ」と力説すると、関東軍の上官である東條は「貴官の言うこと、もっともなり」と理解を示し、この政策を追認したのだ。


【6】意外なところでのふたりを。
安江仙弘は安彦良和虹色のトロツキー」に脇役として登場。
また長山靖生偽史冒険世界」という本に、日ユ同祖論信奉者として登場している。長山氏はこの論によるユダヤ人への親近感が安江の原動力の一つであったと考え「偽史人道主義を生んだ珍しい例」と。


また樋口は寺内大吉(浄土宗の偉い坊主であり作家)の書いた「化城の昭和史」という本にもちょこっと出ている。この本は井沢元彦も「逆説の日本史 鎌倉仏教編」で紹介していたが、日本昭和ファシズムに「法華経」信仰がいかに影響を与えたかを小説仕立てで論じたもので、なんつうか「半オカルト的裏歴史」好きの人はそういう視点で読んでも面白い。
その中で、法華信者ではあるが理性的であった人として出ている。

逆に、法華信仰と大陸政策を混交させた巨魁として、当然ながら石原莞爾も登場するわけだが、石原・樋口・安江は同期の桜だったというからスゴイ話だ。


【7】杉原は結局、1990年代に正式に外務省、日本政府から名誉回復をされたのだが、それを推し進めたのがなんと鈴木宗男佐藤優の「国家の罠」コンビだったという。
それがイスラエル・コネクションと佐藤らを繋げる重要な資産になったとか

(「国家の罠」P284-286より)

鈴木宗男杉原千畝

外務本省は、訓令違反をし、外務省を退職した外交官を褒め称える鈴木の言動に当惑し、この話題がランズベルギス・リトアニア大統領との会談で提起されることを警戒していた。
私は別の観点から杉原問題をランズベルギスに提起することには反対だった。(ここでリトアニアが、ドイツと複雑な関係があってユダヤ人には加害者的な側面もあることを読者に説明する)・・・杉原問題を提起することは不適当であると直言した。
鈴木は私の意見によく耳を傾け、しばらく考えた後にこう言った。


「佐藤さん、ランズベルギス大統領は、ソ連共産全体主義体制と徹底的に戦って、リトアニアに自由と民主主義をもたらした人物である。それであるならば、杉原さんの人道主義を理解することができるよ。一流の政治家とはそういうものだ」

で、最終的には大統領はこの話題を不愉快がるどころか、ビリニュス市の通りの1つを「スギハラ通り」に改名したという。

イスラエルの外交官、学者が鈴木をユダヤ人に紹介するときは常に「鈴木宗男さんがセンポ・スギハラ(註:杉原は名前を音読みされ「センポ」とするほうが国際的には有名)の名誉を回復しました」といつも初めに述べるのが印象的だった。

国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて

国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて

鈴木宗男が「一流の政治家とは」と語るというのにも相当な違和感があるが(笑)、事実らしいからしゃーないやんけ。そういえば俺、何度も予告してるくせにいつ「国家の罠」感想を書くんだよ(自己ツッコミ)。続編ともいえる対談本「国家の自縛」も出ているのに。

国家の自縛

国家の自縛

(関連スレッド http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20051011#p3