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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています 

「ヒトラー〜最後の12日間」見ました

というふうに格闘技サイト向けのマクラをふったところで、こういう形につなげます。
実は見に行ったのはやや古く、先月の23日。東京の震度五地震のとき、「映画館にいた」というのはこの映画のこと。映画の中でも、ヒトラーの地下壕は砲撃でぐらぐら揺れるのですが、それを実感できたともいえる(笑)。
(ほんとは大きな地震の時、映画館とかにいつづけるのはいくないんですけどね)

映画のキャッチコピーは「彼の敵は世界。」2時間半を越える大作だ。
実際に見ての感想は、ことは60年前やドイツのこととは限定できず、またヒトラーゲッペルスヒムラーといったナチの面々にもまったく限定できない、「末期的組織における普遍的な問題」をあぶりだすことに成功しているといえるのではないか、ということです。


小生は、2chでも映画板はほとんど見ないんだけど、今回はそこへいってスレッドを探してみた。
http://tv8.2ch.net/test/read.cgi/cinema/1111238569/
うわ、俺が書きたいことがだいぶ先を越されている。でもいいや、フェアプレイで紹介しとこう。

450 :「ヒトラー・・」見てきたよ :2005/07/23(土) 22:21:43 ID:3coZOrNS
実は俺、倒産を経験している。
親戚がやってる会社に入って、その関係もあって若いながら
経営陣の一人だった。しかし残念ながらうまくいかなくて・・。
その倒産寸前だった時期の社長に、このヒトラー
そっくりなんだよなw

追い詰められたヒトラーは、現実に実行できないような
反撃作戦を自慢げに説明したり、逃亡した部下を
「裏切り者めぇ!」とののしったり、また集まった
部下たちに、「お前たちが私の言うことを聞かないから
こんなことになったんだ!」と、八つ当たりしたり。
これ、昔の社長が追い詰められて、現実にはありえない
新しい仕事の話をしたり、見切りをつけて転職した部下を
裏切り者呼ばわりしたり、俺ら経営陣にあたりちらしたり
と、まったく同じような姿を見せていた。
それを困惑しながら対応する側近の姿は、かつての
俺の姿にオーバーラップして、なんか身につまされた。

そういう意味で、俺にとっては、妙にリアリティがあって
見ていて辛い映画だったよw


451 :名無シネマ@上映中 :2005/07/23(土) 22:40:01 id:Sn8NmYMQ
>450
その社長は最後に全責任を負って首つったのか!?


452 :「ヒトラー・・」見てきたよ :2005/07/23(土) 22:48:11 ID:3coZOrNS
>451
うんにゃ、生きてるよ。
そこだけはヒトラーと違うところかw

映画の中で、部下たちが陰で「どうせ負けるんだし・・」とか
ぼやくシーンがあるが、俺もかつて同僚の取締役と
「どうせツブれるんだし・・」と、話をしたことを思い出して、
なんか苦笑したというか、泣けてきたというか・・。
あの部下たちの気持ちはよく解る。

そういえば、SF作家かんべむさしが「俺はロンメルだ」という作品を書いていた。
実際にけっこう存在する、自分を戦国武将などになぞらえてるおっさんを社長に頂く会社があり、その自分をなぞらえる対象が、こともあろうにナチ指導者で・・・という話だったっけ。

なんとかんべむさし氏はその後新興宗教にハマってしまって(最近カミングアウト)ちょっとアレなのだが、かつてはいい作品を量産していた。氏はナチス第二次世界大戦にも格別の興味を持っていて、皮肉と風刺に満ちた爆笑傑作「ポトラッチ戦史」や、ごく短く、単純な構成の掌編ながら、寓意性と迫真の緊張感に満ち、個人的には恐怖小説ショートショートのベスト5に入れたい「逃げる」(だったかな?)という作品を書いていた。
あれ?「ポトラッチ〜」は2003年に、漫画化とかでもしているのかな?

笑撃・ポトラッチ大戦 (講談社青い鳥文庫fシリーズ)

笑撃・ポトラッチ大戦 (講談社青い鳥文庫fシリーズ)


また脱線したところで話を戻す。

ダメだと思ったら、恥も外聞もなく真っ先に尻に帆かけて逃げ出すようなやつがリーダーなら、それはそれで大変ではあるが、ある意味リアリズムという点では一片の救いがある。しかしこのヒットラーは、もはや妄想的な逆転策と、「すべてが得られないなら、すべてが滅びればいい」という、周囲にとっては迷惑極まりないロマンチシズムに取り付かれてしまう。その分、迷惑の範囲が拡大し続けていくのは言うまでも無い。


じゃあ、部下のほうが無理にでもリアリズムに乗って対処するなり、自分たちなりに動けばいいのかといえば、なぜかそうはならないんだよねえ。

どんな先の見えた組織であっても、組織というものは魔力的な拘束力を発揮し、相互牽制やしがらみ、或いはこんな時期にあっても「ナンバー2の座」への欲望・・・さらには崇高な義務感や連帯感なども含めて、個々人を拘束していく。
(よく「ドイツ人特有の規律感・・・」という評価もあり、そういう伝統的な個性もあるんだろうけど、やっぱりもっと普遍的なんじゃないかな)



ところでナチスというのは、聞くところによれば英国ほどではないとはいえユンカー・貴族制度という硬直したドイツの旧支配体制と対立(と妥協)の末に権力を奪ったという面もあり、国防軍(の将校たち)とは常に一定の距離があったらしい。


251 :名無シネマ@上映中 :2005/07/10(日) 02:21:46 ID:6ovsiqhV
まあまあ、下層階級出身のナチやSSどもの制服は、全部国防軍を元にしてるから。
やはり、プロイセン以来の将校団がドイツの基本でしょ。
つまり、ナチの支配まで陸軍が国家を持つ帝国だったのよ。
ヒトラー伍長が、散々将軍や将校を罵倒する場面、フリードリヒ大王の肖像画を見入る場面を見れば、ヒトラーでさえその精神的影響から逃れられないことがわかる。
彼自身や古参党員は、全員WW1時には軍人だったし。
だからこそ。ボルシェビキの方法云々と言う意味がわかる。



252 :名無シネマ@上映中 :2005/07/10(日) 02:54:16 ID:9jdD/9FK
>251
ナチ党やSS、ルフトバッフェの制服は国防軍ではなく民間の自警団やスポーツ団体の制服、熱帯仕様の軍服を元にしてるんじゃないの?その証拠にこれらの軍服は開襟だが、国防軍は立襟だ。彼らが下層階級出身だからこそ国防軍に対抗する象徴として平服をもとにしたスタイリッシュな開襟式の制服を採用してあらたなエリート服の象徴にしたのだろう。

ヒトラーが一人一人、部下の「無能」と「裏切り」を罵倒するとき、
私もスターリンを見習うべきだった・・・彼のように将校の大粛清を!!
おいおい、だから独ソ戦の序盤はソ連が大被害こうむったんやんけ。
しかしまあ、両極端は相通ず、という実に象徴的なシーンであった。
(ただ、ヒトラースターリン(両全体主義)を強調するのは、「歴史家論争」以来、これまたドイツではタブー。「ナチスを『〜と性質は同じだ』と相対化するのか!」となるからね。こういう点でもドイツの中では衝撃作だったんだろう)


細部においてのリアリティは言わずもがなで・・・と、こちらにそれほどの知識がないのであるが、各種の紹介文やブログ感想を見ても、そこは確実っぽそうだ。
ブルーノ・ガンツが、なにしろ情緒不安定ゆえに怒鳴ったり嘆いたり、穏やかな老人にもどったりする多面性(それも、意識的な多面性ではなく、病的な多面性)を見事に演じている。

また上のリンクより

476 :名無シネマ@上映中 :2005/07/24(日) 19:45:44 id:afunjbKz
今回の映画は、かなり細かく史実に忠実で驚かされます。

ヒトラーの最期の模様は、意外に多くの人が生き残って証言しているだけに、
細かく描けたんでしょうね。

なにしろ、ヒトラーが最期に食べた料理や、
それを作った人まで分かるくらいだから…。


477 :名無シネマ@上映中 :2005/07/24(日) 19:54:42 id:afunjbKz
で、おぉ!と思ったのは、当時の記録写真や映像を完璧再現しているところ。

ヒトラーが最後に公の場に出た映像として有名な、ヒトラーユーゲントに叙勲をしているところなんて、まんまそのもの。しかも、わざとPK班を写し込んで、記録映像とは反対側からの構図にしてたり、さらに装甲兵員輸送車の後部ドアに、もたれかかって死んでいる婦人兵なんて、ここまで写真と同じにするか!というこだわりっぷり。
制作者の本気度が伝わる作品です


478 :名無シネマ@上映中 :2005/07/24(日) 20:35:50 id:QyjJplTW
>477
その写真みたいれす


479 :名無シネマ@上映中 :2005/07/24(日) 21:34:29 id:afunjbKz
脱出戦の最中に死んだ婦人兵の写真は、現在発売されている書籍、続・ラスト・オブ・カンクラッペに出ています。 正面から撮ったものと合わせて掲載されていますので、いかに忠実に再現しているかが分かると思います。

                                                                                        • -

99 :名無シネマ@上映中 :2005/04/24(日) 18:51:16 ID:Ye+yDMX/
ベルリンで観ると、けっこうベルリン近辺の地名が出てくるので、ソ連軍の位置とか
距離感が掴めて緊迫感がある。


101 :名無シネマ@上映中 :2005/04/24(日) 22:40:17 ID:+zMRirVO
>99
あれかなー、仮に日本が本土決戦やってたとして、それについての映画を作って
それを日比谷で鑑賞したとして作中の台詞を置き換えてみた。。


「もう品川の北まで前線が後退しています!」

「大反抗?何を馬鹿なことを!アメリカ軍はもうこの大本営から500メートル、
日比谷公園まで来ているんです!」

「見ろよ、あの国電の線路を。あそこが栄光の大日本帝国の辺境だ。
あの向こうはもうアメリカ領だ」


これを都内で見るとすればなんかリアリティありすぎ。


102 :名無シネマ@上映中 :2005/04/25(月) 01:08:04 id:KDi/+yWa
>101
それと同じような体験をしたと、むかし森田芳光が書いていた。
場所は渋谷東宝。作品は『モスラ』。

ふむむ。
ただ、ここでひとつジレンマが出てくるわけだけど、こういう形で記録に忠実に、忠実にとやると、外から見た描写にならざるを得ず、内面というものに踏み込むにはどうしても抑制的にならざるを得ない。

漫画とかでも、フキダシで「やったー!・・・」とか「残念だ・・・」といいながら、行動すれば、そのときの感情は神の視点から確定するんだけど、それ無しで、外から見た態度だけだったら究極的には解釈不能だものね。この映画は「ヒトラー美化だ!」と言われたときに、「いや、●●という資料に基づいた描写です」と答えられるようにしなければ、という身構えもあっただろうし。(精密さは全然違うが、東条英機の映画「プライド」の東京裁判シーンもこれに近い)

そういう点で、「事実か真実か?」という古くて新しい問題もにじませている。
そういえば、事実であろうが、事実だとしてもあまりに笑えたのが、死の直前にヒトラーエヴァが正式な夫婦となるシーン。

牧師?じゃないな、弁護士か何かが、「定められている人種法に基づいて質問しますが・・・あなたにはユダヤ人の血が流れていますか?」とよりによってヒトラーに尋ねている(笑)。
手塚治虫漫画の中のヒットラーだったら動揺するだろうが(笑)、実際のヒトラーは最後の遺書や独白の中でも「一番の誇りは、ユダヤ人の陰謀と最後まで戦ったこと」といい続けている男。
もはや悲劇も喜劇もない。


それとつながるかどうか分からないけど、この映画を見て思ったのは、日本漫画の二大巨星・手塚治虫水木しげるがともにヒトラーを描いた

劇画ヒットラー

劇画ヒットラー

アドルフに告ぐ(1) (手塚治虫漫画全集)

アドルフに告ぐ(1) (手塚治虫漫画全集)

が、かなーり事実・真実を射抜いていてるじゃん、ということだす。
そういえば二人にとっては、ヒットラーは同時代の一部を生きた人間であってそれは興味を持つであろう。

水木漫画「劇画ヒットラー」は、基本的に事実にそった史伝たらんとしているから細部が似ているのは当然だとしても、手塚漫画「アドルフに告ぐ」はヒトラーユダヤ人説を中心にした有る意味奔放すぎるほどの伝奇性を持つフィクションだ。
しかし、「今に究極の兵器が出来る、原子爆弾だ!」と妄想の中の逆転劇に浸る様や、「あの伍長上がりの狂人にひっかき回された第三帝国も、ここで幕が下りるのだ」と醒めた様子の部下(これは神戸だけど)、この期に及んでも誰が後継者かということにこだわる部下。
フリードリヒ王に自らをなぞらえたり、「名誉ある自殺」にこだわる無駄なロマンチシズム・・・こういった点を、見事なまでに抑えている。


水木しげるは、シュペーア(映画も漫画も、ある種の良識派として描かれる。建築家上がりの軍需大臣なので、直接的な虐殺などにも手を染めず、裁判でも禁固刑で済んだ)が、総統との最後の別れで「都市自爆命令に従えませんでした、ごめんなさい」と謝るところでは、水木版では「君はりっぱだ・・・」と涙をこぼすが、映画版では後になって「シュペーアも私を裏切った」と言ってるな。どっちが正しいんだろうか。まあ、そこで激怒して処刑する事だってありえたんだから、後で愚痴をこぼすだけってのは温情か。

水木漫画のほうのヒットラーは、実は権力を握るまでの一過激政党党首だった時代の描写のほうが抜群に面白い。
リンク先の人もよく知っている。

5 :名無シネマ@上映中 :05/03/20 19:02:16 id:S0xoIz2S
という訳で。
アニメ大国日本としても負けてはいられません。水木しげる先生の「劇画ヒットラー」(ちくま文庫)をアニメ映画化してヨーロッパに輸出しませう。
背景や国防軍の軍人の顔などはやたらリアルで、ヒトラーとその一味の顔はもろ水木妖怪なのが最高に笑える(ゲッベルスゲーリングなど爆笑もの)。 最高の名場面はブレイク前のヒトラーが哲学者チェンバレン(ワーグナーの娘婿のドイツ国粋主義者)を訪問するところ。両者は互いを称えつつ熱烈に抱擁する。


「きみは神によってドイツを導くために現れた偉大な天才だ」
「おお神の予言者 !」
「きみの声はわしの魂をゆさぶる」
「キキキキキ」
「ケケケケケ」
「きみこそはドイツ国民を導いて荒野からひき出すために神が送った申し子にまちがいない」
「おお予言者よ」
「ケ ケ ケ ケ」
「キ キ キ キ」


やっぱし妖怪漫画w

シュペーアについて話を繋げるけど、こういう組織、こういう巨悪の中にあっての「良識」や「忠誠」とはなんぞや?ということも考えさせられた。
戦火のベルリンにわざわざ飛行機で舞い戻り戦場に強行着陸し、熱心に脱出を勧めるパイロット(この人が最終的な空軍指導者になったそうで)。子供たちにむりやり薬を飲ませて、一家全員でヒトラーに準じたゲッベルス
(映画にも出てきた、彼の遺書を読んでみよう http://tv8.2ch.net/test/read.cgi/cinema/1111238569/204 )

一方、ソ連軍迫るベルリンではあちこちで勇敢に戦う、戦わせられる防衛軍がいる。
それを指導し、最後まで指揮する上官がいる。
戦場で傷ついた兵士を必死で治療する軍医もいる。


彼らは、歴史において善か?悪か?それともこの問いこそが無意味なのか・・・?
最後に、史劇の定番である「その後の彼ら」がテロップで説明されるシーンが有るんだけど、かなりの人がほんの3、4年前まで生存している。60年とは、そんな時間だ。



最後に、もう一度引用しよう。

171 :名無シネマ@上映中 :2005/06/25(土) 04:06:58 id:EsOVR0G/
全然美化していないよ、単にヒトラーも人間だったってことを描いただけ。

で、個人的にはヒトラーが人間であったほうがより恐ろしいよ。

「血も涙もない怪物ヒトラードイツ国民を恐怖で操って蛮行をなしました」

っていうのと

「カリスマも感情もあるヒトラーという人間に従って国民が蛮行をなしました」

本当に恐ろしいし、後生への教訓になるのはどっちだと思う?
前者なら人ごとだね。後者ならまたいつか起きるかもしれない。

君も僕もあの蛮行をなした可能性はあるんだよ。平凡な人間、血も涙も
流す人間が行ったからこそ、あの蛮行、そしてナチスは恐ろしいことなんだよ。

疲れて書けなかったもの

実はここから、最後にこれもある種の独裁である「タリバン」に話を持っていき

大仏破壊 バーミアン遺跡はなぜ破壊されたか

大仏破壊 バーミアン遺跡はなぜ破壊されたか

を紹介したかったのだが、上のエントリが長くなりすぎた。
「大仏破壊」については後ほど。


(続く)