しかしピンチはチャンス、帝国主義戦争を内乱に。
萩原遼氏にぐっと注目が集まる、この機に乗じてぜひ彼の著作を紐解いていただきたい。
- 作者: 萩原遼
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などなど。
この中では「拉致と核と餓死・・・」の一部をhttp://d.hatena.ne.jp/gryphon/20040701#p1で紹介したことがある。
今回は、共同通信記事でも触れられている大宅壮一ノンフィクション賞受賞作「北朝鮮に消えた友と私の物語」の末尾の文章をご紹介しよう。
・・・わたしも怖い。生まれつき臆病な小心者である。総連のテロを思うと震える。これを書きながらも体が震えてくる。ここ一週間ほど食欲がないのはたぶんこの恐怖感のせいだろう。ピョンヤンで殺されかけたことはすでに書いた。その後二度総連の暴力分子にやられたことがある。(略)
ごく最近こんな話を聞いた。チュチェ思想研究会というのがある。北朝鮮と総連が金を出して飼育している日本人の金日成信奉者の組織である。ここを最近抜けた青年がわたしに語ってくれた。ある総連幹部の言葉である。
「萩原はわれわれの襲撃対象である。しかしへたにわれわれがやると国際問題になる。日本人のおまえらがやれ。その時期はわれわれが指示する」
これを聞いたときもしばらく食欲がなくなった。
しかし、いかに小心者とはいえ、ことと場合によっては命をかけねばならないときがある。
(文春文庫P414-416より抜粋)
結局当事者ではない我々がやれいけそれ行けとも言えないが、この文章には深い敬意を表わしたい。そして無力ながら私は、そして皆さんも、読むという行為によって彼と、また彼らが記した友への助けとなってほしい。
萩原氏は上の文章を記した後、フランスの詩人ジャン・タルジューが反ナチスドイツ闘争を呼びかけた時の歌を引用し同書を終えている。
孫引きさせてもらおう。
死んだ人々は、還ってこない以上、
生き残った人々は、何が判ればいい?
死んだ人々には、慨(なげ)く術もない以上、
生き残った人々は、誰のことを、何を、慨いたらいい?
死んだ人々は、もはや黙ってはいられぬ以上、
生き残った人々は沈黙を守るべきなのか?