INVISIBLE D. ーQUIET & COLORFUL PLACE-

John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

そこにありえたかもしれない未来・・・漫画「奪還」「めぐみ」

どちらも、蓮池透さん、横田夫妻が原作になり、実際に彼ら拉致家族が経験したことを、漫画化したもので、リニューアル復刊後は「ノンフィクション性」を雑誌のコンセプトにしている漫画アクションでも、その目玉として評判を呼んでいる。「奪還」は上・下で完結し、「めぐみ」は現在連載中だ(もうすぐ単行本になるはず)。

奪還―北朝鮮拉致ドキュメンタリー (1) (ACTION COMICS)

奪還―北朝鮮拉致ドキュメンタリー (1) (ACTION COMICS)

はまぞう、最近の本なのに画像を入れろよ。



「奪還」を読んでつくづく感じるのは、あの「拉致被害者(一時)帰還」→「北朝鮮に戻らずそのまま日本に」→「小泉第二次訪朝」→「家族、日本に」が、きわめて危うい綱渡りの上に成立した、ということだ。


また「パックイン・ジャーナル」のハナシで恐縮だが、田岡俊次田岡元帥)閣下は「拉致家族は北にとってもお荷物。はじめから返す予定だった」とずっと主張されていたが、トンデモない。
おい、今やじうまワイドに出ている日刊ゲンダイの二木さんよ、あんたパックインで言ってることとちゃうで。CSに出演する人って、地上波と発言の使い分け多すぎ。同じくパックインメンバーの三田園さんも、結局自分は経済制裁に対してどう思っているのかを言わずに。



で、話を戻そう。最悪の場合は、
拉致被害者一時帰国」→「私は拉致は許しました。自分たちはすでに共和国国民です、家族もいるので戻ります」→「お父さん、お母さん、お兄さん、逆にこちらに会いに来てください」→「北お得意の、薄っぺらな『大歓迎』」→「外務省や政治家は国交正常化交渉を進めていく」→「田中均大出世、米援助も再開」→「2005年、日朝国交正常化」


ということだって、ありえたのだ。
(参考:http://d.hatena.ne.jp/kikori2660/20050217#p2)このへんは、誰か腕のある人がシミュレーション小説仕立てで書いてくれれば、もっとリアリティが出てくるのだが。
(実際に「奪還」では、被害者の蓮池薫さんが3か月前から平壌のアパートに隔離され、工作機関の人間と共に「自分たちは北に定住する、北にきてくれ」と不自然なく呼びかけるための想定問答を行った光景も再現されている)

それを打ち破ったのは、老練な外交官でも国民に選ばれた代議士様でもなく、血を分けた肉親と、小さい頃から遊んでいた親友の、血と魂の叫びだった。


薫さんの幼稚園時代からの親友、丸田光四郎氏は、北の公式発表を繰り返していた薫さんにこう呼びかける。

「オレはお前を、ここに止めるため”だけ”にやって来てるんだからな」
「お前がそれでもイヤで・・・・・・オレとの友達付き合いやめるって言うんだったら一切会わなくていいよ・・・」
「その代わり帰らないって約束しろ!そうしたらオレは二度と会わなくていいよ!」

親父とお袋 北朝鮮に遊びに来い?バカ言ってるんじゃねェよお前!(略)
温泉連れてくるのが親孝行!? 冗談じゃねェよ! お前の親孝行なんていい加減にしろよだな・・・
親孝行っていうのは!! この親の死に水を取ってやるのが 親孝行なんだよ!!

私もこれを読んで、深く感じるところがありました。
「ああ、親を温泉なんぞに連れて行く必要はないな」と。(←誤読)


かくして、彼らの力によって政治家の無能(というより妨害)にも関わらず、紙一重の危うさで彼らは無事日本に定住することができたのです。
そういえば1巻には田中真紀子議員の「コメ10万トンなんか出しちゃだめ、100万トン出さなきゃ!」という光景や山本一太議員の裏切りの光景なども、映像化ならではの迫力で描かれている。


連載中の「めぐみ」は、さらに有名な横田めぐみさん拉致と、家族の苦悩、闘いを描く。
こちらは、まだ未解決のために北側からの情報は亡命者などを通じるほかなく、そのぶん横田夫妻の悩みが重層的に描かれる。「自分たちが悪かった、自分たちの責任だ」と思うこともあれば、オカルトに頼ろうかと思うこともあったという。
しかし、多くの人の助けと自らの不屈の魂で、彼らは闘い続けている。そう、今も。


ここで一番、個人的に涙を流したシーンがある。
横田夫妻はめぐみさん拉致直後、公開捜査のために警察に写真を提供する。
皆さんも見たことがあるであろう、学生服の写真は、実はちょっと病気で寝込んで入学式を欠席しためぐみさんが、「桜のあるうちに」と両親に促され、校庭を訪れて最初に学生服で撮った写真だった。

だが、カメラは玄人はだしの横田さん撮影でも、めぐみさん自身は「病みあがりでヘんな顔になっちゃった」とこの写真にたいへん不満だったという。
普通の家庭ならまた、いい時に撮り直せばいいのだろうが、その機会は永久に巡ってこなかった・・・・(いや、永久などというのはよそう。少なくとも家族写真は、再び撮影するチャンスがあるはずだ。彼女を取り戻せば)。


そして、警察に写真を出すとき、お母さんは
「めぐみちゃんはその写真を嫌がってたのに、もっとかわいい写真があるのに」
と言い、お父さんは
「めぐみは消えたとき学生服だった、学生服の写真なら手がかりが増える」
と、この写真を出す。


形は違う。だが、愛情の大きさは同じだ。