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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

真摯な傑作「封印作品の謎」を読む

封印作品の謎

封印作品の謎

ウルトラセブン12話 スペル星人」や東宝映画「ノストラダムスの大予言」など、主に差別表現や人権問題のために”封印”された作品とその経緯を、元産経新聞記者が追ったドキュメンタリーだ。

実はこの種のテーマは、本人も触発されたと述べているように、「別冊宝島」が先鞭をつけ、その後多くのムックであえて偽悪的にこの種の「アブナイ」作品を取り上げるのが流行した。スペル星人に至っては、そのかなり前から雑誌などで笑いを呼ぶキャラクター化していますね。例えばファンロ・・・・・・いやいや思い出したくない記憶は”封印”しておこう(笑)


その一方「放送禁止歌」「ちびくろサンボよ、すこやかによみがえれ」など、真正面からこの問題を論じつつ、まだ一種のタブーである「人権や差別反対の立場が、自由を圧殺する」「表現の側が、揉め事を恐れ自主規制する」というカラクリを暴く作品も近年出始めている。

この二つの潮流が作者の中でうまく融合されてできたのが本書である。


なんといっても、他のムックにない魅力は、封印作品の謎に迫る”プロセス”を文章化しているところである。これは中国史書が「列伝体」「編年体」に大きく分かれるがごとく、最近のノンフィクションも「調べて、材料だけを元に書く」という方式と「どのようにして取材したかを一緒に書く」というスタイルに大きく分かれる。


どちらにも一長一短があるが、今回の本は後者であることで大きな成功を収めた、といえるのではないだろうか。

これはhttp://d.hatena.ne.jp/naonos/20050206からの孫引きだが、安藤健二氏と同様に大新聞社を辞めフリージャーナリストになった烏賀陽弘道氏という人がいる。
彼がHPで言っているところによると

http://ugaya.com/column/taisha1.html
(朝日に限らず新聞社や通信社にいる同僚たちにはぜひ伝えておきたいのだが、新人記者になって最初の5年間くらいの初期レーニングは、かなり強力な武器をぼくらに残してくれる。これはaccuracy checkとでも言えばいいのだろうか、記事に書くデータをチェックして、間違いがないようギリギリまで詰める実務のことだ。当たり前のことのように思うかもしれないが、ずっとフリーで育った人は、このアキュレシー・チェックが意外に弱い人が多い。人によって違うが、入社5〜10年目までのトレーニングというのは、プロのライターとして渡っていくには、けっこう貴重な財産なのだ。週刊誌の記者として、また編集者としてフリーのライターと仕事を日常的にこなした身として、これだけは強調しておく。)

格闘技ライター・ヤスカクこと安田拡了氏も「自分は新聞社(中日新聞だっけ?)の社会部記者出身だから、その手法で数々のスクープをものに出来た」と語っている。

そのへんの評価には議論もあるだろうが、少なくともこの本で、幅広い関係者やライターなど、中心も周縁も含め数多くの人物から話を聞いたのは、やはり新聞記者的な資質が必要不可欠だったろう(はてなダイアリー重鎮・町山智浩氏も取材に答えてコメントを寄せているよ)。   

(続く)