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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

(ガチマガより3)戦士の独立の砦、インディアン居留地カジノとは?

ガチマガ話、なお続く。P58からの「カナダ総合格闘技事情」だ。
ついでに予備知識として町山智浩ブログにも若干目を通しといてほしい。
http://d.hatena.ne.jp/TomoMachi/

例の米国大統領選の結果を受けて、民主党支持者が絶望のあまり主張するパロディに
「(同党の牙城であった)豊かな東西両岸の州は、同様にリベラルな地域であるカナダと合併しよう!そうやってできたユナイテッド・ステイツ・オブ・カナダに対して、残った(共和党の牙城である)内陸部の農業州は、祭政一致の『ジーザス・ランド』とでも名乗ってくれ」てえのがある。

http://www.mainichi-msn.co.jp/kokusai/america/archive/news/2004/12/09/20041209dde012070003000c.html
2004年12月13日 ロサンゼルス國枝すみれ、写真も】

 ◇「リベラル州分離も必要」

・・・・・・ブッシュ大統領が再選を決めた直後、民主党支持者らの間に2種類の電子メールが駆け巡った。一つは、「あと4年! 5900万人はどうしてそんなにバカなのか」と見出しを掲げた英「ミラー」紙のコピー。もう一つは、民主党支持の西部、北東部州がカナダに加わった「カナダ合衆国」と、共和党支持の南部、中部州の「ジーザスランド(神の国)」に分離した「北米新地図」だ。地図には「モラルの問題だといえば、赤い州も我々が離れていくことを許してくれるだろう」と添え書きがある。

・・・ワシントン州シアトルの同性愛者エリック・トムさん(46)は、11州で同性結婚を禁じる住民投票が可決されたことにショックを受けた。車で数時間北上すれば、リベラルな政治風土で知られ、同性結婚も一部で合法のカナダだ。「この国では歓迎されていないと感じる」と話すトムさんは、パートナーの退職を機にカナダに移住するつもりだ・・・

実際、カナダは同性婚を国レベルで認める方向にあるのだ
http://news.fs.biglobe.ne.jp/international/ym20041210id01.html


かくもリベラル?な国のカナダ、今後しばらくしたら「この国はなんて素晴らしいんだ!」とかつての某国や某国のように夢を託すような論調が出てくるかもしれないからその意味でも注目。


さて。ここからが本題その1だ。
かくもリベラルな国家であるカナダが、我らがボンクラの愛する総合格闘技に対して、となると・・・

・・・(MMAの)大会終了後、モントリオールにあった選手&関係者の宿泊先のホテルに、警察官が出動し、ジノビエフ、コナン、スティーブ・ネルソンらが収監された。一度は警察の包囲網を抜けたジョン・ペレッティは、自ら警察に出頭し、「我々は法を犯していない」と証言。収監されたものには大会を主催したバトルケード社が保釈金を支払い釈放となったが、後味の悪さはいつまでも消えなかった・・・

これが1996年に開かれた、カナダ初のメジャーMMA大会開催の話。
その後は州政府に開催については任せるとなったそうだが、オンタリオ州(カナダ人口の半分がいる!)は禁止。他州でも、MMAへの偏見は強く強く、州ではなくローカルコミッションの許可で開くとかロビー活動をなんどもやって、やっと承認させるとかいろいろ大変なのだ。


ま、総合格闘技がリベラルから眼の仇なのか保守から眼の仇なのかはまだいまいち資料が無い。この件については何度も書いたので、このブログを検索してみてください。



さて、本題その2。
最初に紹介した、有名格闘家の集団逮捕があった大会は、こんな厳しいカナダのどこで行われたのか?
なぜ警察は、「大会後」の逮捕で、大会前にそもそも中止させなかったのか?


それは・・・

法的に許されていないのに、なぜ、大会開催が可能に
なったのか。それは開催地が、カナダ政府から自治
許しを得ているインディアン(ネイティブカナディアン)
テリトリーのカウグナワガ地区だったからだ。(P59)

ということである。某大会出場予定者はカナダ警察から「試合するなら、試合後インディアン自治区を出た時点で逮捕してやる」と脅されたそうだ。言い換えれば、インディアン居留地には手を出せないということであーーる。



そして、居留地はその財政を支えるために、カジノが認められているところが多いようだ。
ギャンブルがあるから、やや享楽的な金持ちのための見世物として、また賭けの対象としての格闘技が許容されるのでしょう(たぶん)。
小生が、このインディアン居留地と格闘技の関係を知ったのは、お馴染みひねリン氏の初期のレポートに負う所が多い。
一例として
http://www.kansenki.net/report/00/1209grcl_hine.html
を挙げるが、その他にもKOTC(大山峻護デビュー)などの記録がある。

それを読んだ小生は、一度もカジノや居留地なんて足を踏み入れてないのに(笑)、こういう場面を書いている。

・・・そこは、奇妙な場所だった。
夜と昼を逆転させたような明るさの、それでいてどぎつく品のないネオンが乱舞する不夜城
地球最大の富を持つ資本主義国家の、その物質文明がグロテスクなまでに突き詰められた場所----すなわち、カジノ街である。
しかし、もしその客が町の周りを観光したい、と思ったら(元々そんな客なぞ殆どいないのだが)、周辺に、普通の町にあるような自然な環境---町を構成する他のさまざまな施設---がないことに気づかれよう。いや、むしろ殺風景なまでに何もない、山と林だけの風景を目にするはずだ。
それが、インディアン保護区に人工的に作られたカジノの街であった。

ある人のレポートにはこう記されている。

「今や南CAのMMAのメッカとなりつつある(?)ソボバカジノは、ロスから車で二時間くらい東(内陸)に行ったところにあります。ソボバインディアンの保護区が近くにあります。なんか周りはほんとになんにもなくて、行きがけのドライブでは、左手に山が広がり、右手に緑のフィールドが広がる景色を楽しめました(試合開始が二時だから明るかった)。」


「レディース・アンド・ジェントルマン!!この天国たるカジノの、地下に突如現れた金網地獄へようこそ!!」タキシードのアナウンサーが、マイクで開会を宣言する。

「鷲の知恵」カジノの地下では、普段以上の熱気に包まれていた。1万ドルからじゃないと賭けじゃない、と嘯きそうな、イタリアスーツに身を包み葉巻をくゆらせる富豪、食事代をはたいて、それをここで倍にせんとぎらつく目の貧乏そうな老人、自分が大会に参加すべきじゃないかと言いたくなるような筋肉の発達した、革ジャン男・・・バラエティに富んだ観客が、カジノの地下会場にはぎっしりだった。

これこそは、インディアン居留地を利用した、アンダーグラウンド(といっても半ば公然だが)のNHB大会である。

 
「フロンティア」なる名目の基、自らの大地を奪われ”保護区”に押し込められたインディアン(ここでは敢えてこの用語を使用する)は、その後貧困と共同体の崩壊に苦しめられた。

そして公民権運動の時代が終わったのち、インディアンには雇用の機会と財政基盤を与えるため、かの居留地にカジノの建設権と、一種治外法権ともいうべき独立性が与えられたのだ。
それがインディアンたちを益々まっとうな職から遠ざけ、博打がさらなる貧困を生む、といった指摘や、カジノ資本が結局白人のものだといった状況はあるものの、ともあれそれらカジノ周辺には高度な自治権が存在するようになった。

そして、その自治権はスポーツ・コミッションにも及ぶ。ガイ・メッツアーをして

「ボクシング・コミッションは会場に来て、『このリングは我々には安全に思えない。
この大会を禁止する。』って言えるんだ。彼らは、そういう強大な権限を持っている。
もし同意しなければ、州兵を呼んで関係者を逮捕させることだってできる」
http://www.geocities.co.jp/Athlete-Crete/1310/metzge_srs.html

と恐れさせたボクシング・コミッションも、インディアン自治区の中まで権限は及ばない。ゆえに、賭けの対象としてのフリー・ファイトが、このカジノ内で行われているのだ。

勇敢なる戦士であるインディアンの闘争の歴史が、巡りめぐって別の勇者たちの戦いの場を保障している、そんな因縁とも言えるかもしれない。

とはいいつつも、この大会?が「戦士への敬意」とは程遠い環境にあることも事実であったが。
ケン・シャムロックが嫌悪した、かつての「人間闘鶏(ヒューマン・コックファイト)」・・・・・・技でも闘志でもなく、ただ流血とアクシデントを見て、何がしかの賭け金が手に入れば満足、という人々が主な客だった。

(「リングス・スターウォーズ第二部・聖戦篇」より。ネットでは現在未収録。
 第一部はhttp://homepage1.nifty.com/~memo8/griffon.htmlに収録)


いや、おれの妄想はどうでもいいんだが

カナダのこの居留地は、何度も当のカナダ政府から分離独立の動きを見せているケベック州にあったりするからややこしい。(ケベックはご存知の通りフランス語圏で、ドゴールがわざわざやって来て「自由ケベック、万歳!」とアジるなどという暴挙をしている(笑))


米国はというと、例えば「映画欠席裁判2」での「ウインドトーカーズ」評が参考になろう。

「これ、ナバホは脇役じゃん!!」
「ナバホは彼ら(白人兵)に守られるだけ」
「まるっきり舎弟」
てんで、バーカーボーイズの二人はお怒りだ。

ウェイン
「ナバホの男は偉大な戦士なんだぞ! 彼らは自分たちの権利を勝ち取るため、勇気を示すためにアメリカが戦争をはじめると我も我もと志願したんだ。・・・ナバホはね、戦争に貢献したことなどで自治権を勝ち取って、現在はアメリカ国内に独立したナバホ国を持っているんだ」


ガース「ああ、モニュメント・ヴァレーのあたりでしょ」

ウェイン
「言ってきたけど、あそこはアメリカとは別の法律、別の裁判所、別の政府があって、外交以外は国家としての権利を認められている」


ガース「プエルトリコと同じですね」

このおかげで、MMAもひところはがんがん制限なくやれたわけです。

ただし、このような形で先住民族が、独立不羈の構えを見せているのは好まし・・・くもない。
本来、風と大地と精霊の中で暮らす人々が、ある意味福祉のおこぼれ、労せずして入るバクチのテラ銭で食えるというのは容易に人を腐らせる力も持つ。
遺伝的体質もあるが、インディアンの中にアル中が多いのも無縁ではあるまい。


もともと、あの場所は丸ごと自分たちのもの(と、いう概念がそもそもないんだけどね)だったのに自治権をちょっともらったから何なんだ、という人もいるかもしれない。


しかし、それらをひっくるめて、あの巨大な国に、さらに小さな別の国、別の体系を抱えているというのは単純に興味深い。

日本はよくも悪くも、自治権があるような地域は無いし
これからも存在しまい。
しかし、こういうものがあれば「国」のプラスもマイナスもより手触りを感じるのではないか。