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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

沢木のムーブメントが動かした歴史学

毎日新聞書評欄
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/gakugei/dokusho/archive/news/2004/08/29/20040829ddm015070136000c.html

評者はまさに研究者としてかけ出しの時代に、沢木耕太郎の一九六〇年に焦点を合わせた「テロルの決算」と「危機の宰相」に出会った。実はこの二作品との遭遇こそが、その後の評者の歩みを決定的にした。何故なら、ノンフィクションという“新しい”手法に則れば現代史が描けるという確信めいたものを抱くに至ったからである。

 あれから四半世紀がすぎた。・・・評者は長いトンネルをくぐった後、ノンフィクションの手法にヒントを得て、いつしかオーラル・ヒストリーという領域の担い手となった。

いや驚いた。
現在、政治学の中でもっとも輝いている俊英・御厨貴
中曽根康弘や石原信雄(長年の内閣官房副長官)、渡辺恒雄などに直接話を聞きに行き、その談話を歴史学の資料としても通用するようにしよう--という、極めて野心的な試みをやっている学者の、そもそもの着想の原点が沢木の「テロルの決算」など一連の初期傑作だったとは。
(あ、今日の題名は「テロルの決算」だけどそれは偶然。マラソンの話ですから(笑))


自分も、最初に読んだときは「ここまで調べると、ここまで美しく構成できるのか」と驚いたもんだよ。
山口二矢命名、浅沼のポケットの手帳、新聞記事、チケットを山口にただであげた入り口の人の親切、カメラマンのボックス・・・すべての偶然を、運命のように一点に集約させたすさまじさ。
「ノーマンズ・ランド」に関し、最初に提示した謎にとりあえずの答えを出すエピローグ。

御厨の告白を聞いてしばらく考えると、あの作品が歴史学に影響を与えたのもさもありなん、という気が。


さて、そこで。
紙プロ(とくに吉田豪堀江ガンツ、チョロ氏など)の一連のインタビューというのは、まさにオーラル・ヒストリーたりえるものだと思う(けっこう構成で面白おかしくしているとも聞くが、商業的な要請もあるからそれはコミ)。
将来、体系的な格闘技史を描くことを、彼らインタビュアーは視野に入れているだろうか。
意志はともかく、実際にそれは可能だと思う。
ただし、今からそれに向けた準備をするかしないかで、最終的に構築された歴史も相当変わってくるだろうが・・・