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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

皇帝(タケシタハ)のいない8月。

http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/jiken/news/20040830k0000m010129000c.html

1億円裏献金: 逮捕前の滝川容疑者 党本部事務局長に相談


 日本歯科医師連盟日歯連)からの1億円の裏献金事件で、政治資金規正法違反(不記載)容疑で逮捕された平成研究会自民党橋本派)の会計責任者、滝川俊行容疑者(55)は逮捕直前の29日午前、毎日新聞の電話取材に応じ、「献金をどう処理するか、自民党本部の事務局長に相談していた」などと語った。東京地検特捜部は既に党本部事務局長から事情を聴き、事件に至った経緯の解明を進めている。

いまだに「記憶がない」と言い張る橋本、野中さんがた。
なんとも滑稽なピエロであるが、しかし彼らがピエロを務めるステージを見物できるなんて、だれが数年前に予測し得たであろうか。


闇将軍・野中広務が恐るべき情報ネットワークと、各種コネクション、恫喝と懐柔の変幻自在な使い方をもって日本に君臨していた時期は、ほんの少し前である。
その権力は、どこから見ても磐石に見えた。村山が投げ出そうと、橋本が参院選で失脚しようと、小渕が病に倒れようと、森が馬鹿だろうと(笑)、肝心の経世会はいぜんとして日本を丸ごと牛耳り続けていくように見えた。

しかし、気づいてみれば経世会はごらんの有様。参院選の直後にも引用したけど、今回の負けの大部分は旧橋本派の議員の落選によるものだった。



皆様、「日本を丸ごと牛耳る」は大仰だとお思いか。
毎日新聞政治部副部長・与良正男毎日新聞2面の下に時々でるコラムは面白い)は、小泉首相が再選された直後の2003年11月号の「諸君!」で、「箱弁当より毒まんじゅう」という、経世会崩壊の滅びのオペレッタを記録する一文をものしている。

かつて、この派閥は、他派閥の政治家はもちろん、私たち政治記者にも『怖い存在』だったのである。それがこうして冷笑の対象になっていく。これこそが大きな変化なのではないか。

(略)
私は、再び笑ってしまったのだ。
橋本派の混迷は、もはやバラエティ番組顔負けの展開になってきたなあ」




(略)
経世会は私たちメディアも支配していた。権力のあるところには、有力情報も集中する。先に記したように、私たちメディアにとっても怖い存在だった。

・・・・・・業界擁護に『裏懇』というのがある。有力政治家が一部のお気に入りの記者だけ集め、政府はこんな方針でいるだとかそこそこの特ダネになるような話をするという『裏の懇談』を指す。
他社に抜かれたほうはたまったものではないから、そこから外されないようにますます政治家に恭順の意を現し、批判記事が次第にかけなくなる。
この裏懇のシステムを考えたのは田中角栄氏だったと言われる・・・
小泉内閣発足まで、組閣情報は、随分、野中氏が担当記者に耳打ちしてくれるのを頼ってきたのも事実だ。

経世会担当記者を批判するつもりは毛頭ない。仮に私がそうであったら、おそらく、そのインナーサークルにどっぷりつかってきたろう。私たちは『権力の二重構造』と一方で批判しながら、その恩恵にあずかってきたのだ・・・。

よくも悪くも、小泉という男のパーソナリティが、この経世会支配を打ち破ったことは事実だろう。
与良氏は、不思議な政治家の「相性」をこう語る。

橋本派をいいように翻弄してきたのは小泉首相のほうだった・・・
小泉首相は自らを「政策の人ではなく、政局の人」と語る。今回の「青木vs野中」の対立は、首相が虎視眈々と狙ってきた分断作戦が功を奏した結果だったと私には思えるのだ。
・・・野中氏はかつて『小泉の顔も見たくない』ともらしたことがあるそうだ。オペラだ、歌舞伎だという首相のスタイル自体も許せない。橋本内閣の厚相時代には、いざとなったら閣僚を辞任する、法案に署名しない--等々と小泉首相は難癖をつけて、郵政省を郵政公社に移行する道筋をつけてしまった。

このときも野中氏は手も足もでなかった。こと小泉首相との勝負になると、なぜか敗北を重ねてきたのだ。

経世会の思想と行動なんてのもわけが分からなくて、例えば図式的なタカハト分類をするならば


竹下派は、野中氏を筆頭にしばしば北朝鮮、中国に低姿勢(台湾に冷淡)と言われながらも「日中戦争が侵略かは後世の歴史家の判断する問題」(銀英伝か(笑))といったり、橋本首相は「誕生日に靖国参拝」という奇手で小泉に道をつけた。小渕首相は訪日した江沢民に歴史問題でにべもない対応をして、彼を怒らせたともいう。(まあ、江沢民がちょいと外交センスに欠けた人なんだが)

というか、こういう勢力と中南海の大人たちはずっと手を結んでいたんだから、やはりかの国のリアリズムには凄みがあるというか、タテマエと本音の使い分けは大したものだ。

しかし、そこに不透明な流れがずっとあったのもまた事実なわけで。



その経世会というものが、あまりスポットを浴びないまま、最後の命脈を絶ちつつある。
ハンナン浅田・・・はともかくとして、それが波及する範囲も以外に広い。


権力闘争とは、けっこう静かに進行するときはするもので、爽快感はないながら、これが日本にとって「革命」だったのかもしれない。チンケではあるが。

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さてさて、ある意味今までのは前フリ。
橋本派はもはや、今までのような形で復活することはありえないだろう、たぶん。
とすると「対経世会用決戦兵器(意味不明)」小泉純一郎は、その役目を果たしたのだ。


そこで「汝の功績、大である。以後も職務に励め」とするか、それとも漢帝国のごとく
「狡兎死して走狗煮らるる」とするのか。そこが問題だ。



追記。
橋本龍太郎というのは、平成に入って移行の宰相の中では、知的なタフさという点では抜きん出ていた。「美味しんぼ」を全巻そろえ愛読するという趣味はマアどうかと思うが(笑)、それでも首相時代も本屋通いを欠かさなかったし、石破茂がさんざん揶揄された「(兵器の)プラモ好き」も、実はこちらのほうが先輩で、それにともなって軍事オタク的知識も豊富。
彼が出席した時代のサミットでは、二番目に軍事の専門知識に通じていたとか(一番はだーれだ?)。

また、その知性がどうしても「皮肉を言いたい!」という方向に働くらしく、記者会見やTVインタビューではしょっちゅう嫌味を言っておりました。
あれが結構、世界水準といっていい攻撃的ユーモアだった気もする。
ま、その力が十全に発揮できなかったのは何より本人が残念だろうが、これも運命でしょうか。