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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

マイケル・ムーアと「噂の真相」

【註】一部この日の日記は追加あり

町山智浩アメリカ日記」より。

http://d.hatena.ne.jp/TomoMachi/20040703trackback
(↑これを張ればトラックバックになるのかな?)

http://d.hatena.ne.jp/TomoMachi/20040703

(略した部分は・・・と表記した)

マイケル・ムーアもまた権力になってしまった」などと言って何でも相対化すればカッコいいと思ってるお子様もいるだろう。

権力というのは、他人の個人的データを勝手に盗み見て・・・国外追放できることをいう・・・税金を使って国民にプロパガンダを押し付ける力を言うのだ。

マイケル・ムーア自身は、・・・自分の意見を貫くと殺されるかもしれない。・・・・・・脅迫されても警察に守られないムーアが国家と同じ権力だろうか?


・・・もちろん強い自分の意志や行動力を持たない人間にとっては、彼のように強い意見を主張し、その発言が多くの人に影響を与え、映画がヒットするのを見ると、それだけで反発を感じる者もいるだろうが、それは嫉妬であって彼が「権力的」なのではない。彼は金持ちのボンボンではなく、実力で今の地位を得たのだ・・・


華氏911」でムーアが多少の反則をしていてもそれはプロレスにおける「怒りの反則」と同じだ。
・・・瑣末なミスを指摘して「華氏911」を断罪するのは、巨大な国家権力というレスラーたちの凶器攻撃でよってたかって袋叩きにされていたムーアが、椅子をふるって反撃したからといって、それで反則負けを宣告するレフェリーと同じである・・・


・・・でも、おそらくアメリカや日本に限らずムーアに反発する心理は政治とは無関係だ。自分が強いものに逆らう勇気もなく、ただ長いものに巻かれて生きているから、そうでない人間に嫉妬する、惨めな、行き場を間違えたルサンチマンだ。
実は昔から新しいことや突出したことを妨害してきたのは権力よりもそういう大衆の嫉妬なのだ・・・


サイゾー」の連載を「USAカニバケツ」と題している町山氏の問題意識は面白く、また米国や日本などの大衆社会の一面をついている。

しかし、私は何度も表明しているように「宝島30残党武装勢力(?)」の一人である。宝島30からものを見、別冊宝島から否応なく考えてしまう。で、押入れから数冊を引っ張り出してみよう。

1993年、発足間もない宝島30は、宮内庁職員の内部告発とおぼしき記事「皇室の危機」(創刊二号)の掲載問題(今の「皇太子の乱」につながる)で会社を銃撃されるテロにさらされた。
同時に、「新保守主義雑誌だ」「現状肯定のオタク保守だ」「権力を撃つのではなく、それに異議を唱える人に冷笑的な御用マスコミ」などの批判を、おもに新宿ゴールデン街方面(笑)から受けていたのだ。


アメリカの「ネオコン」はいまや世界の悪役だが、直訳して「新保守」とすると、日本では切通理作佐藤健志のことであったという事実を、一応資料として提示しておく(笑)。


しかし、火種があったらそこにガソリンを注ぐのを基本方針とする同誌(笑)は皇室問題でも1994年1月号で、続けて「総力特集」をするのと同時に、巻頭コラムでこう宣言した。(文体からいって、97%ぐらいの確率で町山氏の筆だと思う)

左からは「新保守」と叩かれ、右からは銃弾をブチ込まれ、国会でも非難の的となる日本一の嫌われモノ、「宝島30」です。


「宝島30」を新保守系雑誌だと決めつけるコラムが夕刊フジに載った。なんだかなー(c:えのきどいちろう)。「保守」というだけで悪口になる党派的内輪ノリで書いてるんじゃないよ。「保守の牙城」産経の新聞に(笑)。


「宝島30」は果して保守か?うちが今まで名指しでヤリ玉に上げてきたのは、原発業者、米輸入論者、UNTAC,朝鮮総連小室直樹落合信彦加瀬英明曽野綾子渡部昇一福島瑞穂家田荘子弘兼憲史柴門ふみ秋元康、和田春樹、天野祐吉岡村孝子雁屋哲などなど。これを右だの左だの分類できんの?もし、この面々にあえて共通点を見い出すなら、『いいかげんなことをエラそうに言っている』ということぐらいかな・・・・

93年はご存知の通り細川連立政権が成立した時代で、自民=保守=権力という図式がダイレクトに結びつかなくなりはじめた時期だが、それでも「右」「左」を「権力」「反権力」と意訳してもまあバチは当たるまい。


つまり、同誌は「(相手の立場が)権力とか反権力とかは考えず、『いいかげんなことをエラそうに言っている』場合はヤリ玉に挙げる」というスタンスを取ってきたわけで、実に正しい姿勢だったと言えよう。


 しかし、当時の左派ゴールデン街勢力(笑)がなぜ反発したかといえば、まさに「『長いものには巻かれない』俺たちに、『強いものに逆らう勇気もない』勢力が嫉妬して攻撃をしかけてくるんだあ!ママさん水割り、もう一杯!!」という風に受け止めたからにほかならない。



例えば名前を出された和田春樹氏は、町山ブログのレスでもちょっと書いたけど一度、元総連活動家の張明秀氏に「北のスポークスマン」と名指しされ、彼の弁護士が通告書を送付。
そしたら編集部は93年12月号で逆に7か条にわたる「公開質問」を突きつけたというね(笑)。


そして「噂の真相」や「週刊金曜日」には、同誌は上の巻頭コラムでこう斬りかかった。

チクリによれば、夕刊フジに「宝島30=新保守」説を書いたのは「噂の真相」関係者だってさ。・・・(略)・・・保守だの革新だの、いつまでもそんな冷戦時代の色眼鏡かけててどーすんの。


・・・誰も「週刊金曜日」を恐れてなんかいませんよ。ただ、哀れには思っているかもね。だって、まるっきり冷戦時代の亡霊みたいな雑誌・・・市民運動ノリの特定の人種じゃなきゃ、とても500円出す気になる内容じゃない。・・・(略)・・・あんたら、市民運動ならなんでもええのんか?・・・(略)・・・問題は、それが市民運動かどうかじゃなくて、そこで訴えられている主張でしょ?

これ以降も宝島30は岡留氏にケンカ腰のインタビューを仕掛けるなど(それもウェインにとっては「甘い」ものだったそうだ)、それまで「まともに相手をするのはソン」という形で批判をまともに浴びることを避け得ていた「噂の真相」の甘えや自己欺瞞への、もっとも根源的な批判者となっていくのである。



和田氏が北のスポークスマンとかはそりゃ事実であるが(断言)、まあ総連にベッタリ、金政権二代にベッタリであっても、彼の言論活動時代は日本では自民党政権が続いたのも事実。噂の真相もしかり。

としたら彼は正否とは別に主観的に「反権力」であって、彼らもムーア映画と同じく「瑣末なミスを指摘して和田、噂真、総連などを断罪するのは、巨大な国家権力・・・に袋叩きにされていた同勢力が、椅子をふるって反撃したからといって、それで反則負けを宣告するレフェリーと同じ」と主張するのではないか。というか、噂の真相は、それに類似する主張を実際にしていたと記憶している。



さて、だから町山氏は矛盾だ、というふうに展開するのではない。
むしろ彼ら、とうに滅び去った日本の化石左派・ことに「噂の真相」と、マイケル・ムーアの違いはなんだろう?というふうに考えたほうがいい。


彼が滞米体験でブッシュ政権を肌で感じ、「噂の真相も『怒りの反則』、ちっとあの時は言い過ぎたな」と考えを変えたということもあるだろうし、やはりムーアと噂の真相には本質的な違いがあるとも考えられる。


とりあえず、ギャグが面白いかつまらないか、という点の違いだけは分かるのだが(笑)