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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

格闘家とナショナリズム、政治指向について

下のレスポンスを収録。

美味しいごはん 『http://sportsnavi.yahoo.co.jp/fight/pride/headlines/20040618-00000017-spnavi-spo.html

ヒーリングこんなこと言ってますが、他にアメリカ出身の格闘家で戦争についてのコメントって誰か出してましたかね?エンセンも似たようなこと言ってましたけども。ヒーリングみたいな南部田舎育ちはこういう意識強そうですけど、北部都市部育ちは割りと冷めた目で見てる選手も多いんでしょうか。この辺、まとめられるのweb上ではグリフォンさんの他にいない!と思うんで、ぜひともお題に。』

リンク先のスポナビとは、ヒーリングが格闘家の地位を捨てて軍隊に入ろうかと悩んでいるという話。

榊原信行DSE社長が「ヒーリングは、長期化するイラク戦争で、(ファイターを続ける気持ちと)ナショナリズムとの間で悩んでいるようだ。感情が敏感になっていて『戦地に赴くべきではないか』とも考えており、GPが終わったら選手を引退し、戦場に行くかもしれない」と明かした。・・・・・・ 衝撃の事実が発覚したヒーリングは「兄も友人もたくさん戦場に行っている。将来のことは、まだ分からない」と悩める心境を告白した。ファイターを続けるか、戦地へ行くか。人生の岐路に立たされたヒーリングだが・・・。

同様の話は、エンセン井上にもあったわけだが(結局、米軍隊は体に刺青があり過ぎる(笑)と入隊を認めないらしく、基地の特別格闘技教官みたいなことをやることになったとか何とか)、さらには格闘家より地位のはるかに高いNFL選手の身分を捨て、アフガンに従軍して戦死した人もいるのだからヒーリングがかりに同じ選択をしても驚くには値しないかもしれない。



911直後のPRIDEで、ドン・フライガイ・メッツアーが次々に星条旗をはためかせ入場していたことも忘れがたい。しかしイラク戦争911は支持層が違うからな。911対テロ戦争は支持するが、イラク戦争大義がないという層もあるわけだし、取り合えずおいて議論を進めよう。


ヒーリングは「テキサスの暴れ馬」。
南部テキサスは、ブッシュのお膝元である。(「反中央(ワシントン)」的要素もかつて独立国だった同州には強いが、それは下院議員経験のないブッシュjrへの支持要因でもある)
そういう地理関係もあるだろうが、そもそも格闘家に、こういう問題での共和党支持傾向があるのではないか?というのをひとつの仮説としよう。

いや、一度あるんだその実験が。
格闘技関係のネット歴が無駄に長いほうである小生は、4年前も米国の格闘BBS、UGフォーラムの会員だった。
そこで2ちゃん風にかけば「格ヲタ的にはブッシュとゴアどっちを支持するの?」というスレッドを立ててみたのだが、はっきりブッシュ支持が多かったんだよね。

まア米国の場合は、「UFCが規制されるかされないか」という大政治問題が控えていたから、相当それが特殊事情になることも間違いない。

この問題はPC(ポリティカル・コレクトネス)の側から民主党、モラルマジョリティの立場から共和党の挟み撃ちにあっている話で、あんまり党派には関係ないらしい。


UFCに直接締め出しかけたのは(一匹狼的なスタンスだが)共和党ジョン・マケイン議員であり、第一回UFC-Jでランデルマンにベルトを巻いたのはかつての民主党の大重鎮で後に日本大使になったトマス・フォーリーだもの。
フォーリーは帰国後、産経の古森義久・北米局長(有名な柔道の高段者)に紹介され、齢八十にしてグレイシー柔術を学んでいるのだよ。


ゴアはリベラルだが、その奥さんは「暴力的歌詞を歌うラッパーを規制する会」みたいなのの会長だし、ブッシュは予備選の中で必然的にマケインを叩く立場であった。このへんのことも関係してくるのかのう。


しかし、やはり基本に立ち返ればやはり格闘技に興味を持つアメリカ人には「力の信仰」「マチズモ」がやはりバックにあり、その帰結として共和党指向が強まるのではないかね。かなり乱暴な推論ではあるが。

と同時に、格闘技がブルース・リーによって浸透したという経緯から、いい意味での?オリエンタリズムを受け入れる層、ハリウッド的文化を享受する層も格闘技ブームの大きな割合を占めている。
ハリウッドといえば共和党は圧倒的少数で、リベラルの天下なはずだが・・・タランティーノはご存知の通りカンフー・アクション大好きだが、華氏911にカンヌ映画賞をあげているわけで。
タランティーノは、現実のMMAには興味はないのかな?)


そしてさらに大きな変数が、差別問題であって。
レスリングは肌と肌を接触させるから、アフリカ系に門戸解放されるのが水泳(水を介して・・・)と並んでもっとも遅かったとも聞く。もちろん今ではそんなこともあるはずがないが・・・

ヒーリングは共和党支持でも、テネシー州育ちながらランペイジがブッシュ好きとは思えない。
なにしろhttp://www.so-net.ne.jp/pride/events/pride_gp_2004_2nd/0619.htmlだ。
ランペイジは、サップやランデルマンと比べても「怒れるアフリカン・アメリカン」を前面に打ち出しているな。




半分は材料を列挙しただけのメモ代わりなので、あまり段落と段落の間の論理はつながらない。また、何しろ滞米経験は1週間もないので畳上の水練の感あり。
これを触媒に、もっと深い議論をだれかしてくれることを望むのみだ。


【追加1】ティム・レイシックは前に書いたことがあるけど、インタビューで「最近怒りを覚えたことは?」と聞かれ「彼らに罪はないのに、アラブ系の人たちが迫害されているのを見ると腹が立つ!」と言ってました。こういう人もいる。


【追加2】昨日の毎日新聞夕刊によると、ブッシュ大統領の遊説にマケイン氏が同行、「米国を守り、世界をより安全で自由にする彼の決意は揺るがない」とイラク戦争への支持を表明したとか。
(マケイン氏は、実際にベトナムの戦場を知っている議員仲間として民主党大統領候補・ケリー氏と党派を超えた友人。ミラクルな案として、「ケリーがマケインを副大統領候補に指名」という説もささやかれていた)
その政治家としての全体評価は別だが、UFC規制の元祖としていわば我々の「敵」であるマケインは、残念ながらますます存在感を増している・・・