「山形浩生」の名前をどこで最初に知ったのか、なかなか思い出せない。
朝日新聞の書評委員としてかもしれないし、なんか訴訟がらみのごたごたをSF作家としたしないとかのゴシップだったかもしれないし、リナックスとかの解説かもしれない。
俺はとりあえず、この人の本職らしい経済学の学問それ自体には興味も知識もないのだが、「統計的に裏づけを取ると○○という俗説は間違いである!」という本とか米国のハッカー文化とか、著作権と流通、文化伝播の衝突とかのテーマは大好きなので、たぶん問題意識の多くをかれと共有しているのだろう。
だから、著者を気にせず雑誌などの文章を読んでいたのだと思う。
前著「新教養主義宣言」もなかなか面白かったが、決して洗練されているとは言いがたい、だけと味のある文章は独自の発展を遂げていて、今回の方がカッコ付きながら「読みやすく」なっている。
一応、本職というか彼のど真ん中は、国のインフラ整備はどう進めるのが合理的か、という研究らしく、
実はこのへんが、著作権とかフリーソフトの研究に絡んでくるのでしょうな。著作権が保護されれば文化が発展するのか?
改作・パロディ、いや海賊版ですら発展の礎になるのではないか?
リナックスはなぜここまで拡大、進歩したのか?マイクロソフトに取って換わるものなのか?
セキュリティはコストの中にどう組み込んでいくべきか?
けっこう卑俗な問題を大きな思想に収斂していく手際は、やや大味ではあるが決して強引ではない。むしろ愚直な正統派ぶりも見える人には見えるはずだ。