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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

グッバイ・レーニン!と「取りつくろいもの」

本日ではないのだが、恵比寿ガーデンシネマで上映されている「グッバイ・レーニン!」を見にいった。
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冷戦が終わってしばらく後の旧東ベルリンで、長らく意識不明になっていた一人の老女が病院から目覚めた。彼女は東独時代、社会主義の理想に忠実だった熱心な共産党員。
彼女は、壁の崩壊も「東ドイツ」の消滅も知らない。
「精神的なショックを絶対に与えてはいけない」と医者に念を押された彼女の息子が立てた作戦は、東ドイツがまだ存在していると母親に信じ込ませること。

退院した母親をアパートの一室に置き、西側の風俗が洪水のように押し寄せる中で誤魔化しと詭弁とトリックを駆使し「東ドイツ」を守ろうと息子は孤軍奮闘する・・・

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もともと偽史的なるもの、擬似イベント的なるものを扱ったフィクションは好きなのでそういう視点でも楽しめるのだが、これはむしろ、「取りつくろいもの」というジャンルに属するのではないか。今俺が定義したジャンルだけどな(笑)。

とにかく、ある種のごまかしを必要に迫られて行って、成功したと思ったら、それがむしろ次のピンチを生み、それを糊塗したらさらなるピンチが・・・とやっていくうちに、はるかに意表をついた着地点が生まれる、というものだ。

三谷幸喜の作品に多い。
初監督映画「ラヂオの時間」(「シカゴに海はない!」)はまさにその傑作だし、今だれかが撮影しているという、これまた名舞台の映画化「笑の大学」もそう。ショー・マスト・ゴー・オンもそうだろうな。

大統領の醜聞から目をそらすため、ちょっと戦争を始めましたという「ワグ・ザ・ドッグ」もそうだったか。

落語だと「こんにゃく問答」。

漫画でいうと、数年前に連載を終えた「こちら葛飾区亀有公園前派出所」(まだ連載してるって?・・・だが、あれを「こち亀だ」と言えるか????)の中期の作品は、まさにこの種の傑作が多かった。

江ノ島に鎌倉の大仏があると言ってしまった両津が、みやげ物のミニ大仏を橋の欄干に置く。
「えらく小さいですな」「雨に打たれて縮んだんだよ」


部長の愛車を壊した両津が、中川に命じて別の車を無理やり同じ見た目に改造。
「両津!! 右ハンドルが左ハンドルになっとるぞ・・・」


極めつけは、旅行代金を持ち逃げされた老人会のために、熱海をハワイにしようとしたネタ。添乗員と飛行機の機長の二役をこなす両津は、右半分をアロハシャツ、左側をパイロットの制服にして、役に応じて右向き・左向きを変える。
「こんなタイコもちみたいなことやってられるか!」(注:そういうお座敷芸があるのだ)



「グッバイ・レーニン!!」もその種のギャグがうまく出ている。
老女の部屋から見えるビルの壁一面を飾るコカコーラの看板。
上の階から響いてくる西側のラジオの音。
体調を回復した老女の「テレビが見たい」「町を歩いてみようかしら」との要求。

必死でごまかし続ける彼が、最終的に到達した地点は・・・それはごらんあれ。
もうすぐ公開は終了するかな?

http://theater.nifty.com/db/0000050120/main.jsp

あと、この映画館のすぐ隣ではこういう催しもやってる。これも見る価値あり
http://www.enjoytokyo.jp/OD004Detail.html?EVENT_ID=155

没後50年「知られざる ロバート・キャパの世界展」
2004年4月3日(土) 〜2004年5月16日(日)
東京都写真美術館